出版社内容情報
15年間事務所の社長に押し付けられた借金を返すためだけに生きてきた男が、やり直そうと上京してシェアハウスに住むが…。
内容説明
かつて、世界の秘境を旅するテレビ番組で一躍脚光を浴びた、「ネイチャリング・フォトグラファー」の立花浩樹。バブル崩壊で全てを失ってから15年、事務所の社長に負わされた借金を返すためだけに生きてきた。必死に完済し、気付けば四十代。夢も恋人もなく、母親の家からパチンコに通う日々。ある日、母親の友人・静枝に写真を撮ってほしいと頼まれた立花は、ずっと忘れていたカメラを構える喜びを思い出す。もう一度やり直そうと上京して住み始めたシェアハウスには、同じように人生に敗れた者たちが集まり…。一度は人生に敗れた男女の再び歩み出す姿が胸を打つ、感動の物語。
著者等紹介
伊吹有喜[イブキユキ]
三重県生まれ。中央大学法学部卒。2008年『風待ちのひと』(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)で第三回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、デビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、NHKでドラマ化の後、映画化。14年、『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞候補、第151回直木三十五賞候補になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
271
人情モノの名手伊吹さんでこのタイトルとくれば読まないワケにはいかないですよね、やっぱり。地味ながらも人間味あふれるキャラでしっかりと物語の展開を支えていくので、やはり読んでいて安心します。今作もドロップアウトした何人かがシェアハウスで共同生活していくうちに、それぞれが支えあって再生していくというお話です。大きな感動や涙が止まらないというような感じではありませんが、読み続けていくうちに「いいなぁ、頑張らないとなぁ」とジンワリと勇気づけられる流れにココロが落ち着きます。伊吹さん、こういう作品、ホント上手です。2016/05/21
Atsushi
254
「バブル崩壊」という言葉が使われるようになって久しいが、当時金融機関に勤めていた自分は、「株と土地は永遠に値上がりする」と信じていた。狂った時代はあっという間に終わり、この物語の主人公のように「その後の敗戦処理」に多くの時間を費やしてしまう。「ナカメシェアハウス」に集う登場人物たちは自らを、「今はちょっと、ついてないだけ」と受け止め、苦しみ、悩みながら「見たことがない景色を見たい」と新たな道を歩み始める。そんなラストは感動的。最初「嫌な奴」として現れる宮川の亡き母への思いに涙腺が緩んだ。佐山さんも頑張れ!2017/04/30
takaC
240
20日のうちに読み終わったのだけど、やや強引な幕引きは雑誌連載じゃあ仕方ないのかななんて思いながら片付け事してるうちに記録し忘れたまま寝てしまった。2018/04/20
紫綺
219
ものすごく良かった!!同時にものすごく身につまされた。歳喰ってから、自身を見失い、何処に行きたいのか解らなくなってしまった者たちの人生敗者復活物語。立花、カッコ良すぎ!!2016/05/07
いつでも母さん
195
「若くて未熟で無自覚だった男が救命艇から投げられた浮き輪を、他の人が使えなくなるからと十数年かけて自力で陸を目指して泳いだ」という過去を持つ四十代の写真家・立花とそれぞれにちょっと躓いた男女が寄り添い支えあいながら再生していく優しい短編連作品。どれもじーんと温かく心に残る。人生はそんなに悪くない。幾つからでもまた始められるんだって気持ちにさせてくれる、心地よい読後感だった。立花の母が良い。やっぱり母親には敵わないや・・タイトルがまた良い。2016/05/25