内容説明
吉原の妓楼から依頼を受け、客から借金を取立てる始末屋「だるま屋」。そこで働く直次郎は、理由のわからぬ苛立ちを抱え、今日もまた容赦のない取立てを繰り返す。「だるま屋」のひとり娘・お蝶は直次郎をたしなめつつも、ほのかな恋心を寄せていた。そんなある日、吉原屈指の大見世「丁字屋」の花魁・真鶴から名指しで依頼を受けた直次郎。真鶴は妹分・花菊の首を絞めて逃げた男を探し出し、百両を取立ててほしいと言う。直次郎の胸に、吉原で命を落とした妹・しのの最期が浮かびあがる―。
著者等紹介
宮本紀子[ミヤモトノリコ]
京都府生まれ。市史編纂室勤務などを経て、2012年、「雨宿り」で第6回小説宝石新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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papako
79
『始末屋』という職業があったんですね。初めて読んだ気がします。吉原という場所、そこで生きるしかない女性の悲劇。主人公直次郎の凝り固まった考え方が、女たちの生き方やお蝶、伊八と共に過ごすことで、ようやくほぐれていく。悲しい遊女の恋。妹は女になっていた。小むら、花菊、お幸せに。真鶴花魁、哀しいなぁ。切ないし吉原だし江戸時代なんだけど、青春小説を読んだ気分で読み終わりました。郭言葉『ざます』って言うんだ。なんか眼鏡が頭に浮かんじゃった。2020/07/14
momi
53
久しぶりの時代小説です!切なく哀しいお話ですが面白かったです!始末屋とは…借金の取り立て屋である。そこで働く「直次郎」の深い悲しみと…吉原の女たちの悲しみが切なくて涙が出そうになりました。「妓の首を締めて逃げた客の正体とは!!」犯人がわかっても…愛するものは帰ってこないわけだから…悲しみは変わらないが前に向くことが出来てよかったと思います。男と女の関係は他人には分からないものですねぇ…。2018/01/18
たち
40
「あばえ」最後の真鶴の台詞、沁みました。男女の色恋話はハッキリ言って苦手分野なのですが、これは良かった。お互いの幸せを思う余りに別れるという、なんとも切ない話でした。続編はあるんでしょうか…。ぜひ読みたい。2017/06/19
真理そら
35
取り立て屋の話。真鶴花魁の名指しの依頼で直次郎は取り立てをすることになる。まず取り立てる相手を探すことから始めるが、早い段階から作中にヒントが散りばめられているので、自分の推理が正しいのかどうかを確認しながら読み進める楽しみがあった。それにしても直さんばかりがなぜもてる。伊八じゃなくてもひがみたくなるw2018/03/24
蒼
28
吉原での揚げ代を踏み倒した男の元に金の取り立てに行く始末屋の「だるま屋」で働く直次郎が、吉原一と謳われる花魁真鶴から依頼された取り立ては、直次郎の心の傷と陰を癒し一人の、いや、二人の妓(おんな)に生きる望みをもたらした。だるま屋の親っさん藤兵衛と先輩の伊八そして藤兵衛の娘お蝶が、直次郎を気にかけその瞳の虚無の影を払ってやりたいと心を砕く様子は、吉原を舞台にした時代劇でありなが現代社会の物語の様にも読めてしまった。ラスト直次郎と真鶴のシーンは哀しくも張り詰めた二人の心に背筋の伸びる思いだった。2021/10/29




