内容説明
消費者金融の由木は、江戸文学研究者の本田に家を担保に多額の融資をした。本田は高額の稀覯本を購入するというが、後日、利息の取り立てで家を訪れた由木の目前で彼は忽然と姿を消したのだ。実はその家、以前にも住人が屋内で消失していた…。達磨顔のバーテンが不可思議な謎を解く「三番館」全集第3巻。今回は本シリーズ作品の原案の短編二編を文庫初収録。
著者等紹介
鮎川哲也[アユカワテツヤ]
1919年東京生まれ。南満洲鉄道勤務の父に伴い少年時代を大連で過ごす。’43年「婦人画報」の朗読文学募集に佐々木淳子の筆名で書いた掌編「ポロさん」が入選。’49年「宝石」百万円懸賞コンクールに本名(中川透)で応募した『ペトロフ事件』が一等入選。’56年には講談社の「書下し長篇探偵小説全集」の13巻募集に『黒いトランク』が入選。以後、本格物の長短編を数多く発表。’60年に、『憎悪の化石』と『黒い白鳥』で日本探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)を受賞。’90年に発足した東京創元社主催の鮎川哲也賞、’93年から始まった光文社文庫の『本格推理』にて多くの新人を世に送り出した。2002年9月24日死去。ミステリー界に遺した功績をたたえ、翌年日本ミステリー文学大賞特別賞が贈られた。都立小平霊園に眠る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
98
三番館シリーズの三作目です。やはり書かれた当時の状況がかいまみえてなつかしくなります。最近のように、すべて科学的な分析ではなく本当にちょっとした手掛かりからバーテンがそれを指摘し解決に導いていきます。昔少し見たことがあるNHKテレビの「私だけが知っている」の脚本を基にした作品もあるようです。あと1作を残すのみとなりましたが、こんなに書かれていたとは思ってもみませんでした。2024/08/14
Urmnaf
13
光文社さんがこんな企画をやっているのに3巻目にしてようやく気づいた、伝説の三番館シリーズである。もはや説明の必要もないくらい出来上がったフォーマットで、関係者目線で事件のサワリが語られ、太っちょの弁護士がブツブツ言いながら私立探偵に調査を依頼、探偵が三番館のバーテンに相談すると、瞬殺で事件解決。伝統芸の域。短編であることもあって、事件そのものは1つのことに気づくかどうか、みたいなところがあり、推理クイズ風ではある。ということで、今巻のボーナストラック、「私だけが知っている」版などの初出版2編を興味深く。2023/08/07
コチ吉
10
新たに組まれた三番館シリーズの三作目である。中にはちょっと食い足りない作品もあったが、初出版と改訂版を収めた「ブロンズの使者」は、下書き原稿の行方とそこに仕組まれた罠を巡り、改訂版でより工夫の跡が見て取れ、興味深かった。2024/03/07
Inzaghico (Etsuko Oshita)
9
銀座のバー「三番館」のバーテンダーが、しがない中年の私立探偵が持ち込む謎を、控えめな態度でしかし快刀乱麻を断つがごとく解決する。そして、解決するとたいてい「これは私のおごりで」と探偵にギムレットを振る舞う。それなのに、この私立探偵は、自分がもらった報酬をバーテンダーに分けているという描写がない。お代を払っているから、ということなのだろうか。ちょっとひどくないかい?(笑)「停電にご注意」は、新興宗教の怖さがひしひしと伝わる。クリスティの某作品と趣向が同じだ。それに宗教を絡めるとこんなに気持ち悪くなるのか。 2023/07/29
源氏星
3
三番館全集の第三巻。どれももうちょっと長めのほうがいいかなあって印象。もちろん十分楽しめたのだけれど。2023/11/10