内容説明
僕は何か尊いものを見ている気がした―。昭和三十八年、京都祇園。東京の大学生、津田雅彦は花模様の浴衣姿で一心不乱に祈る女性と出会う。輝く眸に心を奪われ、若者は恋に落ちる。容姿も芸技も随一と評判の舞妓、真祇乃。やがて彼女もまた雅彦に想いを寄せていく。密かに逢瀬を重ね、恋情を育む二人だったが…。許されぬ恋に身を焦がす、歓喜と悲哀の名作。
著者等紹介
伊集院静[イジュウインシズカ]
1950年山口県防府市生まれ。立教大学文学部卒業。’81年短編小説「皐月」でデビュー。’91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、’92年『受け月』で直木賞、’94年『機関車先生』で柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。’16年に紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょこまーぶる
43
素晴らしい温もりを感じた一冊でした。祇園を舞台とした大学生と舞妓の結ばれなかった恋のお話ですが、この設定だけで本の中に引き込まれてしまいました。そして、この大学生の祇園という世界の独特なルール・習わしに立ち向かう純粋で一途な気持ちに、自分は時に心洗われたり、また時には応援する気持ちに心が満ちたりして、とっても充実した読書でした。結ばれなかった恋だったけど、決して悲しいわけではなくて、青春の次のステップへ向かう大切な時だったような気がします。で、いつか結ばれる日もあるんじゃないのかな?と思ってしまいました。2024/12/13
Lumi
20
京都の祇園が舞台。美しい舞妓と、東京から祇園の友達の家に身を寄せる大学生との恋物語。 京都の祇園には行ったことがないけれど行ってみたくなる。 若さゆえの向こう見ずさと純粋さが眩しい。 祇園の外からきた主人公の目線を通して祇園の異質さと美しさ、恋心を感じられる小説でした。2023/10/31
たなぼう
5
一晩を挟んだが、600ページ越えの小説をほぼ一気読み。許されぬ恋に実を焦がす恋愛小説だが、重い気持ちにはならなかった。夏目漱石の『三四郎』と少し雰囲気が似ている感じも受けた。青春小説・風俗小説でもあった。いつまでも忘れないであろう、徐々にじんわりと来そうな佳い小説だった。2024/05/06
goodchoice
2
ただ一言、素晴らしい! 久しぶりに甘酸っぱく胸が締めつけられる恋愛小説を読んだ。2010年発表のようだが、昨今の醒めた若者と違い、主人公を含め相手役の舞妓、その二人を支える周りの人達が皆素直でとても好感が持てる。 本当に良い小説を読んだ。2023/02/24
しょーちゃん
2
個人的にすきな話。舞妓さんと東京の大学生の話はなんだか瑞々しくて、でもどこか危なげで、この年代の子たちだからこそという印象。そこに色づくように添えられた京都の情景が鮮やかで、なんだか夢の中に迷い込んだかのよう。このまちには奥がある、というのを体現したような話でした。2023/01/17