内容説明
脇役俳優の私は、馴染みのプロデューサーの頼みで、幼少期に出会った“おじさん”を題材にした舞台を手掛けることに。彼が何者だったのかを調べ始めると、彼の所有品と思しき古いトランクが見つかった。そこから、おじさんがとある怪事件に関与していたと判明し―。私が辿り着くのは家族の歴史か、自身の出生の秘密か。人生の意味を問う、異色の幻想譚。日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)&本格ミステリ大賞(小説部門)W受賞。
著者等紹介
芦辺拓[アシベタク]
1958年大阪生まれ。同志社大学法学部卒。’86年「異類五種」で第2回幻想文学新人賞佳作入選。’90年『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞を受賞。2018年『奇譚を売る店』で第14回酒飲み書店員大賞を、’22年『大鞠家殺人事件』で第75回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、第22回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
138
“おじさん”こと鍛冶町清輝の所有品の古いトランク。トランクの中は、絵葉書はいいとして、なぜこんな物、なんと物騒な物というような、トランクの中の物が雑貨屋状態な謎だらけの物ばかり。物というよりアイテムというべきか。アイテムを頼りに、おじさんの正体を突き止める旅に出る。その旅は、幻想的で街灯のオレンジ色の光が醸しだす街を、主人公の脇役俳優の“私”と共に、ただ、自分はマネージャーのように黙ってついていき、一緒に旅してるような気分を味わった。旅とは、何をきっかけに旅に出るかわからないものだね。自分も旅に出たい。2024/05/25
qoop
7
正体不明のおじさんの過去を追う主人公が遭遇する奇妙な出来事をまとめた連作短編集。これまで光文社で、古書、古楽譜とモチーフを一つに絞って連作幻想小説を書いてきた著者が、複数の道具立てで仕立てた点は新機軸。それに応じて展開と読み味も変わった。より連作色が強くなったため各編で題材が変わっても印象がブレることなく、スムーズなつながりを感じつつ読めた。2022/11/14
アオノ
3
幻想奇譚シリーズ3作目。といっても、関連性はないので独立した作品として楽しめます。今作はそこまで不可思議な要素もなく(蝶の話くらいか)、地味な印象。不気味で不安な話を期待していたので、肩透かしをくらった感じです。なお、文庫オビの「祝、日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞W受賞」は、完全にミスリードを誘ってますね。受賞作はこのおじさんではなく、大鞠家殺人事件です。勘違いして購入した人絶対いるよ。あざとすぎるオビ大賞決定。まあ、私も「あれ、これだっけ?」と思いながら買っちゃったクチですが・・・2022/11/06
ふゆきち
2
『奇譚を売る店』、『楽譜と旅する男』に続く本作は比較的現実寄り。構成も長編っぽくなりました。前作までとはまた違った雰囲気で楽しめます。2022/08/20
askmt
1
独特の外連味のある短編集である。おじさんという立ち位置が醸し出すのか、時代的なものなのか、はたまた…。2022/10/01