出版社内容情報
菅沼鉢四郎が、思わず「まずい」と言った炊き出しの相手が新選組幹部・原田左之助だったことから大変なことに――!?
内容説明
戦に焼けた京の町で炊き出しをすることになった新選組、料理ができる者がいない。滅法まずいその粥に文句をつけた菅沼鉢四郎は、原田左之助の命により剣を握らぬ「賄方」として新選組に入隊することに。菅沼は数々の難題に直面しながら、隊士の暮らしや愛憎、組織の矛盾を間近で目にしていく。食べ、生き、戦い、やがて歴史の波間に消える新選組を新視点から描く。
著者等紹介
門井慶喜[カドイヨシノブ]
1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。’16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年、咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。’18年、『銀河鉄道の父』が第158回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えみ
58
太平の世でも動乱の世でも、変わらないことは人間どんな時でも腹が減る。身分に関係なく、敵味方関係なく、それこそ時代に関係なく。時は幕末、場所は新選組屯所…賄い専門の隊士として任務に就いている菅沼鉢四郎。彼が見た幕末乱世が咲かせた徒花・新選組の真の姿。刀は扱えないけれど、包丁を振るい隊士達のお腹を満たすことで鉢四郎も戦っていたのかもしれない。一方で、ある意味主役以上の主役だった原田左之助の戦い、家族、想い、憂い…この小説を読み、史実と巷説を織り交ぜて思い描いていた彼という存在の片鱗を見ることが出来た気がした。2021/02/26
みこ
27
剣の腕はサッパリなのにひょんなことから賄い方として新選組に入ることになった鉢四郎と彼を招き入れた原田左之助を中心とした物語。非戦闘員からの視点もユニークだが、新選組の物語は良くも悪くも土方が盛衰の衰の部分を華々しく飾ってしまった感があるので、家族のために生きることを選んだ原田の生き様を描くことで新選組の衰の儚さを描けていると感じた。あまり物語として描かれることのなかった「ぜんざいや事件」を取り上げているので、世界中に三十人くらいはいるであろう谷兄弟のファンも恐らく満足できるかも。2021/03/24
マツユキ
20
新選組は好きではないんですが、興味があります。新選組の料理人とは…?と気になり、読んでみました。蛤御門の変の火事で家を亡くし、妻子とも離れ離れになった菅沼鉢四郎は、料理の腕を買われ、新選組に入る事に…。料理がメインではないんですね。裏方から見た新選組。鉢四郎も失敗したんですが、結婚、子供の誕生による原田左之助の変化。新選組には許されなかったもの。新選組も、時代の流れの中、その強さを失う。その変化は間違いではないんだけど、悲しいな。歴史に詳しくないんですが、その後どうなったのかも読みたかった。2021/08/11
Norico
19
火事で焼け出され、妻子に置いていかれた菅沼鉢四郎。浪人とはいえ、子どものご飯作るのが得意な武士ってなんかすごい。新選組の原田左之助いい人だなぁ。2022/02/08
イシカミハサミ
17
新選組という組織の裏側が見られるのかな、 と期待したけれど、 どちらかというと歴史の転換点ではあるけれど、 一つの物語にするには小粒な新選組関連の事件を 新選組を支えた隊士の目を借りて連ねた感じ。 新選組自体が家庭を持たない戦闘集団だから、 まあ仕方ないこととはいえ 主人公と思われる人物の登場シーン自体が少なくて、 ただ作者が新選組書きたかっただけ説。 エンディングは奇麗。2021/04/16