内容説明
埼玉県秩父山中にある大学の寮「りら荘」に避暑にやってきた七人の男女。みな画家や音楽家を志す芸術家の卵だ。都会の喧噪を逃れて休暇を送ろうとした矢先、婚約を発表した二人が相次いで変死した。そして災厄は次々と学生たちに…。鮎川作品の中でも特に人気の高い傑作長編に加え、著者がデビュー以前に同人誌に書いた“プレりら荘”とも言える中編も収録!
著者等紹介
鮎川哲也[アユカワテツヤ]
1919年東京生まれ。南満洲鉄道勤務の父に伴い少年時代を大連で過ごす。’43年「婦人画報」の朗読文学募集に佐々木淳子の筆名で書いた掌編「ポロさん」が入選。’49年「宝石」百万円懸賞コンクールに本名(中川透)で応募した『ペトロフ事件』が一等入選。’56年には講談社の「書下し長篇探偵小説全集」の13巻募集に『黒いトランク』が入選。以後、本格物の長短編を数多く発表。’60年に、『憎悪の化石』と『黒い白鳥』で日本探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)を受賞。’90年から発足した東京創元社主催の鮎川哲也賞、’93年から始まった光文社文庫の『本格推理』にて多くの新人を発掘。2002年9月24日死去。ミステリー界に遺した功績をたたえ、翌年日本ミステリー文学大賞特別賞が贈られた。都立小平霊園に眠る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みや
27
本格ミステリの定番である「個性豊かな大学生が集う館もの」だが、クローズド・サークルではない。警察のみならず、事件現場に遺族や友人が来て通夜と葬式を連日するほどに開放的で驚いた。死体の数が多い上に殺害方法が多種多様で非常に楽しい。「こうした些細な会話のなかに、あとになってみると謎を解くに足るキイが秘められていた」と伏線の場所を丁寧に教えてくれる親切設計から、著者の絶対的自信が伝わってきた。なかなかに複雑な構成だが、探偵役が終盤で一気に伏線を回収するスマートな真相解明が気持ちいい。巨匠の傑作、面白かった!2023/04/10
見切り発車
16
謎解きの道筋は素晴らしいの一言。だがかなり前の作品だけあって時代背景や文体がやや自分には合わず。淡々と日々を過ごして行く登場人物は皆ロボットのように感じてしまう。自分が時代の最先端をいっているのか、はたまた単純に読書への柔軟性が欠如しているのか(おそらく後者)考えさせられる一冊。2021/02/26
コチ吉
9
確か読むのは三回目になると思う。衝撃的な犯行場面が記憶に残っていたが、その後の展開は忘れていた。確かに鮎川哲也氏の代表作と言える内容。同時に収録されている「呪縛再現」が「りら荘」の原型と言いながら秀逸な時刻表トリックを駆使した傑作となっているのに驚いた。2025/01/19
乱歩太郎
8
りら荘事件、読了。 60年以上前の傑作。何故今まで読んでなかったのか? クローズドサークルではないものの、邸のなかで1人ずつ消えていくという超王道。言葉は少し古いですが全く飽きませんでした。 論理的な解決と伏線回収も圧巻です。しかし、犯人天才過ぎない?(笑)2021/05/22
Inzaghico (Etsuko Oshita)
7
秩父にある実業家の邸宅を芸術大学の季節寮に変換した屋敷が舞台、というのが時代を感じさせる。そこで婚約を発表するカップル、それを祝福しつつも内心は悲嘆にくれる恋に破れた男女。事件が起きないはずがない。本編は素人探偵(ただし日本で唯一ピンカートン社と契約しているらしい 笑)が謎を解くが、ボーナス・トラックである本編の原型となった中編では、この素人探偵は鼻を明かされる。個人的には、ボーナス・トラックくらいの長さでじゅうぶんだったと思う。本編はちょっと長い。ペパーミント・リキュールを使った伏線には素直に感心した。2020/11/25
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