内容説明
都内某所にひっそりと佇む洋館。元は名画座だった古式ゆかしき喫茶店に集うのは、珈琲と映画、そしてなにより“謎”を愛する常連たちだ。密室状態の部屋で、まるで猛獣に襲われたような痕跡を残して死んでいた男の謎(「狼が殺した」)ほか、不可思議な事件の真相を、彼らが映画への深い造詣をもとに解き明かしてゆく―。数々の名画へのオマージュに満ちた連作ミステリー。文庫書下ろし&オリジナル。
著者等紹介
井上雅彦[イノウエマサヒコ]
1960年東京都生まれ。’83年に星新一ショートショート・コンテストで優秀作に選ばれ、以降、幻想怪奇の短篇小説を中心に活躍。’97年に全作書下ろしのアンソロジー「異形コレクション」シリーズを始動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あたびー
42
元名画座であったと言うバロックな珈琲店には映画と謎解きをこよなく愛する人々が集まり、持ち込まれる謎を解決すべく意見を出し合う。一見怪奇現象であるかのような謎は、コードネームで呼び合う彼らが映画を見ながら話し合ううちにスッキリと解決される…と言う連作短編ミステリー。「ショートショート作家」と呼ばれている人は恐らく作者がモデルになっているのだろうな、と想像した。1作目「狼が殺した」の大胆なトリックに驚かされた。2024/03/07
涼
35
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2020/04/post-bdbeb6.html2020/04/03
マルコ(Marco)
31
茗荷谷辺りの旧名画座を改装して、人の謎話好きが集う会員制の珈琲館…雰囲気は好みなのに、正直全く面白く無かった。5篇の基本の流れ→過去の未解決事件や体験談等の話が女性記者・秋乃に持ち込まれる、珈琲館・薔薇の蕾で改めて話す、聞いていた客達が推理し始める、マスターが相応しい映画を上映、解決…。もうほぼコーヒー関係無い、こじつけ気味なウンチクもゲンナリ、会員も<婦人記者><特別捜査官>と独自の呼称付け。名画に関心を持たせる為なら、ロッキーを出す必要って?ヒッチコックは観たくなったけど。2020/01/10
Kazuko Ohta
20
洋館の描写に『ベルサイユのばら』の外伝「黒衣の伯爵夫人」を思い出しました。ここで交わされる話は不出というところには、『ジョン・ウィック』の掟に守られるホテルを思い出したりなんかも。でもそんなにおどろおどろしくも暗くもなければ危険でもない、ミステリーマニアの集う喫茶店。トリックのヒントとして登場する映画はかなり古い名作。タイトルぐらいは知らないと退屈かも。マニアたちは個性豊かで会話も芝居がかっているから、舞台劇になったら面白そうな気がします。私の「文庫書き下ろしはイマイチ説」をぶち破るほどではないんだなぁ。2019/11/26
チャリー・コグコグ
19
連作短編5作。他の井上作品よりミステリー感が高く好み。各話の設定や事件が出来過ぎだが、映画のシーンが現実の事件の謎解きに繋がる。東野圭吾あたりが軽く書く短編でこの手の事件モノがありそうだが、蘊蓄やヒントを多数のキャラ達が順に述べ謎解にあたる描写は井上さんらしさを感じる。もっと多くの人に読まれたらいいな。2020/05/24