出版社内容情報
佐藤正午[サトウ ショウゴ]
著・文・その他
内容説明
次作を書けずにいる新人作家のぼくは、ある日、十代の頃の相棒・寺井と十年ぶりに再会する。しかし、彼は無茶な依頼を口にしたのち、ぼくの前から消えてしまった。寺井を追うほどに胸を過る十年前の忘れ得ぬ出来事と映子の姿。思いがけず始まった人捜しが、止まっていた時間を揺り動かす。若き日の恋と苦い過去が織りなす人間模様。直木賞作家の才気あふれる初期傑作!
著者等紹介
佐藤正午[サトウショウゴ]
1955年長崎県佐世保市生まれ。’83年『永遠の1/2』で第7回すばる文学賞を受賞。2000年に刊行した『ジャンプ』はベストセラーとなり、「本の雑誌」ベスト1に選ばれる。’15年『鳩の撃退法』で第6回山田風太郎賞、’17年『月の満ち欠け』で第157回直木賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目けんこと
35
祝・3カ月ぶりの読破!! やっぱ、佐藤正午の世界観好きだな~!!! 2020/07/22
a子
20
やっぱりしゃれてる。この流れるような言葉の並びがたまらなく好き。退屈に見えたストーリーと噛み砕けない遠まわしなセリフの数々が、読み終わってみると あぁそういうことかとしっくりきて きらきらと光り出す。 ただ、この主人公がなぜモテるのかだけは謎。外見がいいのかなぁ??2022/09/22
majimakira
20
読み心地の良い著者初期の作品。1984年、主人公も若き小説家で、当時の佐藤正午氏と同じく29歳で、デビュー作のヒットによる印税で「放蕩」の日々を送っていた…(これは著者の姿と符合するかは判断できないが…)非常に興味深く、まるで私小説のような生々しさを楽しんだ。「一つの決心のためには一つの何かを捨てることになるのだ、たぶん。」「なにもかも拾って身につけていくような、おれたちはもう子供ではない。」忘れ得ぬ過去の出来事にも、こうして、どこか諦めながらも新たな出逢い方をしてゆくのだ、たぶん。 #佐藤正午2021/05/07
奏市
17
面白かった、今回も期待以上に。恋愛、ミステリなんだが毎度の如く一癖二癖濃い。35年程前の作品で現代の大抵の女性は主人公に嫌悪感もつのだろうが、こんな男女関係も味あって良いとの少数派の女性もいると信じたい。ただ、酔ってたとはいえ自分の帰りを待ってた女が夜食にみそ汁食ってたからって機嫌悪くなる男ってなんなんだ。著者の後の作品のテーマにも繋がる電車や人探しの要素が入っている。そして競輪、夜遊びは相変わらず。スナックママの叔母が賢者。「あんたなんのために十歳も年をとったの。ただ大人になるためにかい。」重いなぁ。2021/02/11
momo
17
佐藤正午の1986年の長編小説です。新装版が出て、やっと購入して読めました。ストーリーの面白さよりも、十年という歳月の重さや行き詰まってしまったときの心持ちを軽妙に表現する文体が独特で素晴らしいと思いました。深刻なことでも感傷的にならず、いい加減に見えて最後は鮮やかに着地する佐藤正午の小説世界は今にいたるまで変わっていないと感じました。題名「ビコーズ」も秀逸です。この言葉の本当の意味が最後に明かされます。全部は言わずほのめかして、相手に察してもらいたいという会話が何ともおしゃれで、心憎いと思いました。2018/11/01