出版社内容情報
松本清張[マツモト セイチョウ]
著・文・その他
内容説明
帰宅途中のバスの中で、浜島は二十年ぶりに小磯泰子と再会した。妻との仲は冷えており、四年前に夫を亡くしたという彼女の家に足繁く通うようになったが、そこには六歳の息子、健一がいた。浜島は彼の眼が気になり、次第に気味の悪さを覚えるようになってきて…。(「第一話 潜在光景」)人間心理の影の部分を浮かび上がらせた、七編の切れ味鋭い傑作短編集。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。給仕、印刷工などの職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。’58年に刊行された『点と線』は、推理小説界に「社会派」の新風を呼び、空前の松本清張ブームを招来した。ミステリーから、歴史時代小説、そして古代史、近現代史の論考など、その旺盛な執筆活動は多岐にわたり、生涯を第一線の作家として送った。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミッフー
112
七つの短編で構成された、人間の業やエゴにまつわる物語✨「潜在光景」は愛人の連れ子が母を奪った自分に殺意を抱いているのではと恐れ慄きその子を殺めてしまう物語😫昨今類似した事件をちょこちょこ耳にするが、犯人もこの主人公同様心理状態に追い込まれていたのか⁉️「確証」は妻の不貞を疑う男が妻に淋病を感染させ間男を探し出そうとする滑稽ながら痛い程気持ちが分かる物語🤣妻は二股おろか三股かけてたのか⁉️特にこの二編はすっかり主人公になり切り没頭して読んでいる自分が😍出来れば短編より長編でじっくり読みたかったな〜💦2019/09/27
NAO
66
7つの短編に共通するテーマは、殺人に至る動機、その後の犯人の態度、の淫靡さ。『薄化粧の男』はタイトルもなにやら淫靡だし、その殺害方法も、当時としてはかなり新しく奇抜なものだったと言えるだろう。決して結びつくはずがないと思われる者同士が影で密接につながっているということこそが、何よりも淫靡というものだ。 2019/05/06
金吾
33
短いながらなかなか面白い推理短編集です。「万葉翡翠」「確証」が良かったです。2025/04/16
ミツツ
33
人間心理の影を積み込んだ車が走って行く、そんなミステリアスな短編集。お初の松本清張先生で身構えておりましたが、切れ味鋭い傑作選という事で大変面白く読めました。女性の言葉遣いなどは時代を感じずにはおられませんで、それ故にいっそう色っぽかったです。2019/11/13
ぐうぐう
27
『影の車』というタイトルが示すように、人の心の影が車のように走り出し、犯罪を起こしてしまうミステリが収録された短編集。松本清張と言えば社会派推理だが、清張の、特に短編を読むと、アクロバティックなトリックに真実味を持たせるために社会派というリアルな動機を採用しているかのような倒錯的な解釈をしてしまいそうになる(例えば「確証」における夫が妻の不貞の証拠を掴む方法の、なんと大胆なことよ)。それほどに、ここに収められた短編は奇妙で奇抜なのだ。(つづく)2023/04/03
-
- 和書
- 法哲学 法学叢書