出版社内容情報
松本清張[マツモト セイチョウ]
著・文・その他
内容説明
元新聞記者の死に端を発した事件、タクシー運転手の三上正雄は、利用するつもりの証拠の手帳が命とりになることを恐れた。必死にかくして営業所に戻ると、令状を持った刑事がやってきて、参考人として留置された。しかし、三上を面通しした岩村都議と飯田事務長はその日の運転手は彼ではなかったと否定した―。癒着の闇を描いた清張渾身の長編ミステリー。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。給仕、印刷工などの職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。’58年に刊行された『点と線』は、推理小説界に「社会派」の新風を呼び、空前の松本清張ブームを招来した。ミステリーから、歴史時代小説、そして古代史、近現代史の論考など、その旺盛な執筆活動は多岐にわたり、生涯を第一線の作家として送った。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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映画、音楽、サッカー本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
竹園和明
39
死体で発見された都政新聞社の記者、タクシー運転手、東京都厚生局職員。それぞれの事情と思惑が交錯する中、桑木刑事の地道な捜査が続く。その3本のラインに絡む何人かの男女。利用する側とされる側がピンポイントで関わっては消えて行く。名作『砂の器』ほどの幅広さ、丁寧な流れには及ばないものの、病院を舞台とした汚職事件とそれに関わる人々の私利私欲にジワジワ迫る桑木刑事の執念の捜査ぶり。“足で稼ぐ刑事”が少しずつ犯人を追い詰めて行く作品の面白さは、今の時代に読んでも色褪せる事はない。 2019/07/15
ながのゆうこ
12
都庁衛生課の役人との癒着にどんな裏があるのか最後まで考えさせる面白さと途中からは記号の解読の楽しみも加わったが結末はいささか強引な気がした。それでも桑木刑事の思考の過程はなるほどなと思って読めた。2018/10/25
ランラン
8
次から次へと登場人物がいなくなり「そして誰もいなくなる」展開かと思いきや意表をついたラストの展開でした。2021/07/14
パチーノ
8
1962年1月8日から12月31日まで「週刊サンケイ」に連載された。 松本清張が10本以上連載を抱えていた時の1つ。 らしさはあり、ラストは意外な展開ではあったが中弛み感は否めない。2018/07/25
ファーラス
7
1962年の雑誌連載が初出。しかしこの文量にもかかわらず書籍刊行は1981年が初出と間が空いている。1958年に社会派ミステリの代表作『点と線』が出ており、1959年の乱歩・清張共編の『推理小説作法』では乱歩によって社会派の強さが恐々と語られているので、清張が大清張となる上り坂を駆け上がっていた頃の作品。…だが、書籍まで空いていることが示すように、生彩を書く内容。清張は定期的に当たりを出すものの、実は自身に課せられた「社会派ミステリは何が求められているか」という解答へは真っ直ぐと進まず、迷いが続く。続2024/04/05