出版社内容情報
「日本の黒い霧」ならぬ「インドシナの黒い霧」の実相を、小説の形式で解明、暴露してみせた松本清張“会心の一作”
内容説明
取材でラオスの首都ビエンチャンを訪れていた石田伸一が、メコン河畔で死体で見つかった。谷口爾郎は取材と称し、石田の死の真相を調べるべく、ビエンチャンに入る。石田の通訳兼ガイドとして共に行動していた山本実に案内を頼み、死ぬまでの足跡を辿っていくが…。内戦に揺れるラオス国内の混沌とした現状が殺人事件と絡み合い、謎は深まるばかり―。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。給仕、印刷工などの職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。ミステリーから、歴史時代小説、そして古代史、近現代史の論考など、その旺盛な執筆活動は多岐にわたり、生涯を第一線の作家として送った。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
63
1969年のラオスを舞台にした社会派ミステリ。当時のビエンチャンは、熱帯雨林と広々としたメコン川に挟まれた活気のない町で、パテト・ラオの重囲下にあり、いつクーデタが起きても不思議ではなかった。色彩も動きもない川と対岸のタイの黒い森。重苦しい雨雲と粘りつくような暑気。のろのろとした人の動きの背後に見え隠れするこの国を覆う暗さと底知れない薄気味の悪さ。麻薬ルートがあるということまでしか描かれていないのも、その暗さゆえか。明かしきれない暗さの原因でもある阿片の白を象の白い脚で象徴しているのがなんともいえない。2022/12/01
ランラン
6
従来の清張のミステリーとは違った展開。ラオスの政治状況や習慣や文化を織り交ぜながらの話の展開。結末は期待を裏切った感はある。2022/04/04
るりねこ
1
灼熱のアジアで淡々と進む物語。ちょっとうっとしい。でもそれが清張か。2022/07/28
mom
1
松本清張のミステリーということで期待して読み始めたが、いっこうに展開がなく、最後は謎のままという歯切れの悪い終わり方だった。2019/08/19
kadoyan
1
久しぶりに松本清張読んだ。 ベトナム戦争前後のラオスが舞台。 殺人事件に絡むのはラオスの政権争い。 清張の綿密な取材により、ラオスの 背景もふんだんに記した1作。2018/01/03