出版社内容情報
原田ひ香[ハラダ ヒカ]
内容説明
シングルマザーの里里の元へ、疎遠にしている母親からぶ厚い封筒が届く。五十鈴加寿という女性が戦前からつけていたという家計簿だ。備考欄に書かれた日記のような独白に引き込まれ読み進めるうち、加寿とは、男と駆け落ち自殺したと聞く自分の祖母ではないかと考え始める。妻、母、娘。転機を迎えた三世代の女たちが家計簿に導かれて、新しい一歩を踏み出す。
著者等紹介
原田ひ香[ハラダヒカ]
1970年神奈川県生まれ。2006年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ脚本懸賞公募(現・創作ラジオドラマ大賞)の最優秀作を受賞。’07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
558
こんなタイトルを手に取ったのは、どこかに家計簿をちゃんとつける奥さん、への憧れがあるのだと思う。蓋を開ければ家計簿をつけたのはシングルマザーである主人公自身ではなく、会ったこともない彼女の祖母。戦時中の困難や、頼りにならない夫や義母に振り回される毎日。そんな中で職場の同僚に惹かれた彼女は・・・。祖母のいなくなり方があまりにも不自然だし、登場人物の多さにも疲れた。女性を救うNPOを絡めたのも無理がある。もう少し読みやすくできたのではないかな。ちなみにわたしは家計簿はつけない。すべてどんぶり勘定(笑)2025/02/07
mae.dat
271
ひ香さんは作風が多彩ですね。本書は『三千円の使いかた』や『一橋桐子(76)の犯罪日記』の様なそこら辺にありそうな日常に潜むお金に窮する人の話。そっち系なのかなぁと思って読み始めました。しかしそうは問屋が卸さないのね。一言で言ってしまえば3世代に渡る女性――加寿・朋子・里里――の間に横たわる感情や確執を、加寿さんの残した家計簿(日記)を通じて解きほぐされて行く物語なんです。余白や行間に依って明言が避けられている場面なんかがあって。故に上手な人は余韻に浸れるのかも知れませんが。儂なんかは幾らか靄りが残るのぅ。2025/04/21
ノンケ女医長
131
32歳の里里。とても素敵な名前。彼女は、10歳も年上で、妻子ある男性を好きになってしまい、子どもを身ごもって出産した。彼女はきっと、生きる支えが欲しかったのだと思うし、生きる糧を教わる機会も残念ながら、少なかったんだと思う。祖母(大正9年生まれ)が遺した家計簿に熱中している里里は、疎遠と言っていい母親の足跡がきちんと記録されているのを読んで、自分の存在や母との関係性を変えられることを期待したのだろうか。祖母の遺した、厚みのある冊子。こういう、人生の修正の仕方もあるのだなと感じ、羨ましい気持ちにもなった。2023/02/26
はにこ
90
タイトル見たときはお金の使い方指南的な内容の本なのかなと思っていたけど全然違った。家計簿から紐解かれる先祖の生き様。戦時中、戦後と働くママだった加寿と今を生きるシングルマザーの里里。状況は違えど生き抜く大変さを痛感した。そんな加寿が居たから里里が救われるということに小説だけど運命を感じた。自分が生きた証をのこした加寿は格好良いな。2023/03/30
mike
88
シングルマザーの里里の元に祖母の家計簿が送られて来た。顔も見た事が無く、知っているのは遠い昔家庭を捨てて男と心中したという話のみ。彼女の戦中戦後に書かれた家計簿にどんな秘密があり、それが里里とどんな関係があるのか?知人から原田さんの3冊を借りたがどれにも家計簿、お金の使い方、女が働き生きる事が根底にあり彼女の考え方が現れている。この本には経済的な話でなく、女性が働く意義や人との繋がりについて書かれてあり、個人的には「3000円の」よりもこちらの方が奥深くて好みだった。2023/01/13