内容説明
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。
著者等紹介
遠田潤子[トオダジュンコ]
1966年大阪府生まれ。関西大学文学部独逸文学科卒業。2009年、『月桃夜』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三代目 びあだいまおう
363
凄い小説だ!気持ちを根こそぎ持ってかれた。終始重苦しく、沼の底に引きずり込まれ、無数の【悪意】という腕が、もがけども、もがけども離してくれない。冒頭は、アル中男に昔の知り合いが少女を預かってくれと頼ってくる。その少女は、二人の幼馴染の女性の子だと。当の女性は行方不明。3人の凄惨な過去が少しずつ明らかに。幸せを求めたわけじゃない、多くを願ったわけじゃない!親という存在からの凄まじい行為、絶望の闇に差す唯一の【希望】そんな親友だった。殺していい命って絶対ある。かの名作『白夜行』を彷彿とさせる確かな傑作‼️🙇2020/07/09
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
163
遠田作品はこれが4作目になりますが、かなりエンタメ色が炸裂しているなと感じました。少年少女時代の荒んだ家庭環境や友情、センチメント…。全て25年前に起きたこととして、終わらせることはできなかったのか。あの時に聴いた『新世界』。その新たな世界を、それぞれが生きることができたなら。圧倒的な熱量を持ってラストへ向け駆け抜けたもの。それが25年間の終焉ではなく、明日への第一歩であったならと…。微妙な感情を楽しむというよりは、メリハリがあってストレートに楽しめる作品だと思いました。2021/07/09
相田うえお
151
★★★★☆18039 当方がここでどんなに言葉を書き連ねても本作品の強烈さは伝わらないと思ってしまうほどの内容でした。読むほどに先が気になる展開に心奪われ、すっかり作品に引き込まれてしまいました。話の最初から最後まで深い闇の中にどっぷり浸かった感じは耐え難いのですが、登場する少女があまりにも素直で健気で、当方、読者であるにも関わらず、見守ってあげなければ〜何とかしてやれないものか〜と、手を差し伸べたくなってしまうのです。また、作品ラストのその先も気になります。これ、読友さんのオススメですが当方もオススメ!2018/05/17
utinopoti27
143
主人公の健太は、大阪で薄汚れた居酒屋を営む中年男だ。物語は、幼馴染の秋雄が突然現れた、ある夏の日から始まります。彼は健太が愛したいづみの娘を連れていて、しばらく預かって欲しいと頼む。いったい彼らに何があったのか、一切明かされないまま進む物語は、やがて正視に堪えない陰惨な過去へと読者を引きずり込んでゆく・・。迷走のあげく、悟ったいづみの真意に慟哭する健太には一言いいたい。あれから25年間、おまえはいったい何をしてきたのか、と。遠田作品特有の理不尽さ、ドロドロと粘着性を帯びた不快感は、本作でも健在のようです。2018/12/14
ふじさん
113
居酒屋を営む藤太の元へ、中学の同級生の秋雄が少女ほづみを連れてきた。次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親のいずみとの間に、25年前の陰惨な過去があった。ほづみの来訪をきっかけに、藤太、秋雄、いづみの過去と現在の哀しく悲惨な真実が明らかなる。絶望と希望の狭間で懸命に生きる人々の生き様が、スリリングにサスペンスタッチで見事に描かれる。遠田は、「一度は人生を捨てた男の再生の物語です」と語っているが、そんな生易しい内容ではない。いづみがたびたび口にした言葉、「それでも…」が心に重く伸し掛かる。 2022/01/07