内容説明
初対面の相手でも、たちまちするりとその懐に入ってしまう。小谷夏子は男をその気にさせる天才だ。彼女との未来を夢見た男は、いつの間にか自らお金を出してしまうのだ。そんな生来の詐欺師を遠縁に持つ弁護士・石田徹子は、夏子がトラブルを起こすたび、解決に引っぱり出されるのだが…。対照的な二人の女性の人生を鮮やかに描き出し、豊かな感動をよぶ傑作長編。
著者等紹介
桂望実[カツラノゾミ]
1965年東京生まれ。大妻女子大学卒業。会社員、フリーライターを経て、2003年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞しデビュー。’05年『県庁の星』が映画化され、ベストセラーになる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
通勤の友本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
288
今、話題の作品を読める幸せ。主人公は夏子のようであり、弁護士の徹子のようでもあり。どちらもとても魅力的な女性。ことに夏子の、爛漫で他人を魅了する性格と行動には、同じ女性として実は大変憧れる(笑)。そして、それを見守り、孤独を手懐けた徹子にも。初読みでしたが、また追いかけたい作家さんが増えました。2016/06/25
あすなろ
214
女性弁護士とその遠い親戚の女性の人生を現代に至りつつ描く。なかなか興味深い構成だった。そういう書き方あるのか、と。夏子は小悪党。それを腐れ縁として見続け過ごした女性弁護士。対比させていくことが本作の描きたい一面なのだろう。それをある一定の湿度を保ち、それを読者に問い続け、女性の人生を考えさせ続ける筆力に興味を抱いた。渋い作品。2015/10/23
ノンケ女医長
190
表紙の、嫌な女とはおそらく小谷夏子なのだろう。相手の懐にすっと入り、心地よい時間を提供する才腕の持ち主。鮮やかな思い出をたくさん共有してきたのだろう。そんな女性に私は微塵も共感したり、仲良くなりたいと思わない。夏子の遠縁とされる、石田徹子弁護士。いろいろな負の感情に立ち向かい、理路整然と対応する。やっつけるではなく、逃げるのでもない。そんな勇気溢れる女性に私はなりたい。彼女と長年を過ごした藤田みゆきさんが、徹子に宛てた最期の手紙。「徹子先生、ありがとう」。気遣いに溢れた言葉の数々に、心から泣いて感動した。2023/06/26
🐾Yoko Omoto🐾
174
桂作品初読み。徹子と夏子、遠い親戚にあたる二人の女性が晩年までに関わり合った数々のエピソードから、仕事や人間関係に大切なものは何なのか、幸せとは生きるとは何なのかを優しく暖かに伝えてくれる。徹子の人生観の変遷には本当に共感できる部分が多く、後半は特に胸が詰まるシーンが多かった。虚無感に捕らわれたり人との関わりに煩わしさを感じたりすることは誰も皆同じなんだ、けれど幸せや楽しみを教え与えてくれるのもまた人との繋がりなんだと改めて気付かされた思いだ。今、この年で読んで良かったと思える心に染みる物語だった。2016/05/22
佐々陽太朗(K.Tsubota)
173
肉体のピークは二十歳前後であっても、人はやはり六十年、七十年と生きて完成するものなのだなぁ。長い年月をかけて人は深く深く成熟していく。こうありたいと願っても、そうならないことも多いけれども、それが人生だ。なんとか心の中で折り合いをつけるしか無い。幸せな人生とは何なのだろう。どうすれば幸せに生きることが出来るのか。この問いに対する作者・桂望実氏の答えは「恕」であるように思う。ゆるす、おもいやるこころ。人間は白でも黒でも無い。善でも悪でも無い。これでいいという到達点も無いし、それではダメだという断定も無い。2014/02/20