内容説明
ある夜、ぼくの部屋の窓ガラスに一羽の大鴉が入り込む。無尽蔵の知識と知恵を持つ彼は、勉強から宇宙の話まで、様々なことを教えてくれた。そんな時、ぼくは初めての恋を知る(表題作)。人生のある時点で若返り始め、最後は赤ん坊になって死ぬ奇病が蔓延する世界で起こる愛の悲劇(「Uターン病」)。ほか、リリシズム溢れる傑作全十六編を収録。
著者等紹介
式貴士[シキタカシ]
1933年、東京都生まれ。本名・清水聰。千葉大学文理学部英文科卒業後、早稲田大学大学院に編入。’58年、同大学院文学研究科(英文学専攻)修士課程修了。修了間際に創設された、ワセダミステリクラブ中心メンバーのひとりである。間羊太郎名でミステリ評論や児童向け読み物、小早川博名で雑学やジョーク収集、ウラヌス星風名で西洋占星術研究、蘭光生名で官能小説など、幾つもの筆名を用いて様々な分野で活躍。’77年、SF作家・式貴士としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
501
15
著者は生理的嫌悪感をもよおすエログロナンセンスなキワモノが印象的だが、本作は抒情的な作品を集めた短編集。このためインパクトはやや控えめ。SF要素も控えめ。といってもどの作品も著者独特の体がむずかゆくなるような毒気を含んでいる。控えめでもやはり生理的嫌悪感をもよおす。著者の作品はこれがいい。2016/02/21
凛風(積ん読消化中)
7
かつて、中途放置をした本の再読キャンペーン第一弾。これは、表紙のカバーを描いた齋藤芽生が好きで買った本。かなりグロ物を書く作家だとは思っていたけれど、これは、まぁ、それほどでもない。(にしても最近このラインの本が多いなぁ。好きじゃないのに)著者の妙な結婚願望がおかしくて、ドン引きすること度々。例えば、絶望した主人公が、どうせ死ぬなら結婚してから死にたい、と片思いの相手に「電話」!でプロポーズ。はあ? こんな話がポロポロあって、それをロマンチストと評されているのが解せない。まあ、放置するわな。2021/10/18
hirayama46
3
再読。あらためて読むと、どの短編もわりと素朴というか、それほどひねった話にはしていない感覚がありました。奇想はグロテスク方面に発揮して、リリシストとしては直線的に行っていたのかな。好きな短編はやはり表題作の「窓鴉」。雑学の入れ方もかわいらしい。ショートショート残酷譚「猫の星」も本書では例外的ですが好き。2021/07/30
hirayama46
3
叙情小説集ではあれど決してスウィートではない、というのが式貴士らしいところかな。残酷性のなかにあるセンチメンタルが感じられました。しかし、ショートショートのなかには普通に怪奇小説なのでは……というのもありましたが。/お気に入りはやはり個人的に式貴士の短編でもベストクラスに好きな「窓鴉」ですが、「Uターン病」「天虫花」もたいへん良かったです。「天虫花」はキャラもかわいいので、短編アニメにしてほしいな。ならないだろうけど……。2015/10/13
けいこん
2
図書館でみつけた懐かしい著者の本。中学の頃、親に隠れて読んだなぁ。コレクションだから昔読んだ事あるのとないのと混じってた。窓鴉が特に良かった。おおむねSFとして読めるんだが、星とも筒井とも違う。ほのかに恋愛というか、官能的な感じがして(決して官能小説ではない。)、なんとも癖になる味。熱狂的なファンがいるというのも頷ける。2014/10/07