内容説明
野生獣たちは、躰の中から蝕まれていた。見えなくなる目、口から毛穴から噴き出す血…。山に投棄された大量の廃棄物によって汚染された水、そこから生まれた新種の寄生虫が、彼らの体内を喰い荒らしていたのだ。山の怒りを体現した野獣が、悪鬼のように荒れ狂う―。彼らに死を突きつける資格が人間にあるのか?人と自然の真の共生を問う著者渾身の傑作。第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞ダブル受賞作。
著者等紹介
樋口明雄[ヒグチアキオ]
1960年、山口県生まれ。南アルプス山麓に居を構え、執筆する日々を送っている。2008年に上梓した『約束の地』(光文社刊)で、第27回日本冒険小説協会大賞と、第12回大藪春彦賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小梅
84
戌年に犬本7冊目。読み応えがありました。巨クマと巨イノシシが切なかった。八ヶ岳に行きたくなりました。2018/02/17
goro@the_booby
57
いいねぇ樋口明雄!野生の動物との共生を探る架空の組織WLPの新任支所長を主人公に据えて、獣害だけでなく里山での様々な現実の問題点を浮き彫りにしながら読ませホロリとさせる。化け物になってしまった「稲妻」と「三本足」の獣たちが哀しい。そこに父と娘、カレリアベアドックとの絆の物語を絡ませこれでもかと贅沢な物語。大藪春彦賞・日本冒険小説協会大賞の受賞も頷ける。2016/11/12
鈴
45
巨熊、巨猪、犬、人間。様々な戦い。人間同士の争いが一番醜い。いろんな問題を詰めすぎた感というか、ひとつの話に全部入れちゃうのは勿体ない気もするが、それだけに読み応えがあった。2018/06/16
翔亀
42
人間に危害を加えるクマやイノシシとの共生を考えるための副読本にしても良いくらいに、作家の「自然と人間の共生」への確かなビジョンが伺える。エンタメ小説としてもよくできていて、殺人事件のミステリーと野生動物が凶暴化するホラーSFの要素が物語を駆動する。私としては殺人事件の方はなくても良かったが、寄生虫の突然変異で巨大化・超動物化したイノシシの「三本足」とツキノワグマの「稲妻」と人間の対決が、愛に昇華するあたりに凄みを感じた。2016/04/03
アイゼナハ@灯れ松明の火
36
読み応えありました。読み終えて、表紙を見るとまたいいなぁ…決してオールオッケーなエンディングとは思いません。でも、苦みを含めてなお先へ、進もうとする意思を感じる。自然と、動物と、社会と、家族と、そして死と…忘れたり克服したりするのではなく、共に生きていこうとするその関係には、少しばかりの謙虚さや、嫌なことから目を背けない毅さが必要なのかもしれない。自然や動物は口をきけない。だから意見は持たないというのは多分間違い。「約束の地」は誰かに与えられるものではなく、たどり着くべき場所なのでしょうね、きっと。2011/11/21