内容説明
王冠のダイヤモンドが盗まれ、首相みずからがホームズのもとを訪ねる「マザリンの宝石」、赤ん坊の血を吸う(?)母親を相手にする「サセックスの吸血鬼」、若い女性に恋をした老教授の不思議な行動に端を発する「這う男」など12編。発表はみなドイル晩年のものだが、「ライオンのたてがみ」以外、事件はすべてホームズの引退前(1903年以前)に起きている。
著者等紹介
ドイル,アーサー・コナン[ドイル,アーサーコナン][Doyle,Arthur Conan]
1859‐1930。イギリスのエディンバラ生まれ。ロンドンで医師として開業するが成功せず、以前から手を染めていた小説の執筆に専念、ホームズもので大人気作家となる。また、映画にもなった『失われた世界』をはじめとするSFや、歴史小説など、数多くの作品を残した。実際の殺人事件で容疑者の冤罪を晴らしたこともあり、晩年は心霊学にも熱中した。ナイト爵をもつ
日暮雅通[ヒグラシマサミチ]
1954年生まれ。青山学院大学卒。翻訳家。日本推理作家協会、日本シャーロック・ホームズ・クラブ、ベイカー・ストリート・イレギュラーズの会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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セウテス
65
〔再読〕ホームズ最後の短編集。本作にはワトソン博士の語り以外に、ホームズの語りや三人称の作品が在ります。珍しいのですが、はっきり言って違和感の方が多く、いかにワトソンの語り方式が魅力的だったのか、読み比べてみると良く解ります。「ソア橋の難問」は、トリックを推理するにも人間性を推理するにも、程よい難易度でミステリを楽しめます。又ホームズの語りという不馴れさはありますが、「ライオンのたてがみ」ではホームズがロンドンを離れ、サセックス州の田舎で引退生活を送っている事が分かります。本作で終わりと、寂しく思います。2016/03/15
hiro
48
森見さんの『シャーロック・ホームズの凱旋』を読み、小学生の頃に児童向け、高校生では文庫本でも読んでいたが、もう一度全作品を読みたくなり三度目のホームズシリーズとしてこの21世紀の読者向けという、注釈も充実しており、有名なファンの方々の『私のホームズ』等もあったこの光文社文庫を選んで正解だったと読み終えて思った。若い頃に読んだ時と違って三度目のホームズシリーズでは、書かれた時代の影響を強く感じることができ、更にホームズシリーズが与えたものの大きさとともに、手紙・電報から電話へなどの技術進歩も強く感じた。2025/06/04
tengen
41
9弾ラスト作。連絡手段が電報から電話に!☆国家の危機、宝石を取り戻せ☆殺人現場の橋の上を観察する☆突然の主の奇行☆赤ん坊に噛みつく血だらけの母☆珍名ガリデブ、3名揃うと大金持ち?☆超悪党の結婚を阻止せよ☆夫人への奇妙な買取話☆戦友が隠れ住む秘密☆最後の言葉ライオンの鬣☆妻失踪、画材屋の依頼☆隠された顔の秘密☆突然変わった兄と妹の謎☆彡マザリンの宝石/ソア橋の難問/這う男/サセックスの吸血鬼/三人ガリデブ/高名な依頼人/三破風館/白面の兵士/ライオンのたてがみ/隠居した画材屋/ヴェールの下宿人/ショスコム荘2018/06/05
aika
40
とうとうホームズシリーズ、最終巻!「サセックスの吸血鬼」は、血の繋がらない親子の苦悶が描かれていて、現代でも普遍的な題材だなあと思いました。「白面の兵士」では、語りがなんとホームズ自身で、所々鼻につく物言いにクスッと笑ってしまいます。この短編集の中で、結末が一番好きです。「ライオンのたてがみ」は、ホームズ引退後の物語で、ワトソンが登場しないのが残念ですが、現役引退後もバリバリなホームズの姿は頼もしいです。100年以上前に書かれた作品なのに、現代に生きる私たちを魅了するホームズとワトソン、あっぱれです!2017/01/09
KAZOO
38
日暮さんの訳のシャーロック・ホームズに慣れてきた感じがします。ただかなり昔読んで文語体的な新潮社の本も時代性を感じさせてくれてよかったと感じます。ビクトリア朝にピッタリの感じがしていました。今の人にはこの本のほうが読みやすいのでしょう。12編が入っていますが、私はソア橋、三人ガリデブなどが好みでよく読み直しています。2014/10/10