内容説明
シュルーズベリの人々が楽しみにしている聖ペテロ祭。ところが祭りの前日に町の若者と商人・トマスが思わぬ諍いを起こす。さらにはその夜に行方不明となったトマスが水死体で発見される最悪の展開。新修道院長・ラドルファスに事件解明を頼まれたカドフェルは、難事件に頭を抱えることに…。「魂を射る矢はない。しかしそれを癒す軟膏はあるかもしれない」―カドフェルの言葉が胸に泌みる感動のエンディングは…。
著者等紹介
ピーターズ,エリス[ピーターズ,エリス][Peters,Ellis]
1913年9月28日、英国シュロップシャ州ホースヘイに3人兄弟の末っ子として生まれる。祖母はウェールズ人。幼少期、地方史に造詣が深い母と一緒に、ウェールズ国境近くの古城や旧跡を見に行ったことが、将来の作家生活に大きな影響をもたらした。’33年から’40年までの7年間は科学者の助手・薬剤師として働き、第2次世界大戦では海軍婦人部隊に従軍。’36年に歴史短編小説を発表して、作家デビューを飾る。以後25年間に20冊以上の歴史小説を本名のイーディス・パージターで刊行する。’59年からエリス・ピーターズ名義で推理小説を書き始める。’81年にイギリス推理作家協会のシルヴァー・ダガー賞、’94年には大英勲章O.B.E.を授与される。翌’95年10月14日死去、享年82であった
大出健[オオイデケン]
1942年生まれ。デジタル書店「グーテンベルク21」を主宰
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
124
全巻で僧院の院長が変わりますが副院長とは違っていい人物のようです。やはり歴史ミステリーの一環らしくかなりそのような箇所が多いと感じますが楽しめます。どちらかというと歴史ばっかりではなく人間関係もあってそれが読み続けさせるひとつの要素ともなっているのでしょう。2016/05/17
真理そら
51
再読。シリーズ第4弾。いつものように美しく聡明な娘の恋と事件が並行して進行する。新しい修道院長ラドルファスの筋は通すが柔軟な対応もする姿勢は気持ちいい。王位を巡るスティーブンとモードの内乱は続いているがシュルーズベリはひとまず平穏になり聖ペテロ祭で各地から商人が集まり賑やかな市が開催される。終盤はハラハラする展開。火傷を負った美しい娘エンマが「取るに足らない小商店のせがれ」フィリップを見つめるシーンがいい。2019/12/03
たち
24
聖ペテロ祭の熱気と喧騒がシュルーズベリの街を包む中、大変、うすら寒い殺人事件や窃盗事件が次々とおこり、捜査に乗り出したカドフェルとヒュー・ベリンガーを翻弄します。緊迫度マックスのラストシーンは、とても読み応えがありました。面白かったです。それと、新しい院長ラドルファスの粋な計らいに拍手!2017/12/13
ぺぱごじら
18
12世紀イングランド『無政府時代』の修道院を舞台にしたミステリ第4弾。女帝モード対スティーブン王の争いがいよいよ本格化する時期らしく、事件も政治陰謀的な空気を帯びています。若い頃に十字軍として出征し、あれやこれやの海千山千時代を経て、今は『世間のことなど知らん、わしはわしの薬草園が大事だ』と悟りきった我らがカドフェル修道士。それでも彼は愚かで拙い若者の正義を嘲笑うことなく真摯に祈りを(半分眠りながら)捧げるおじさまでもあります。新任の院長とは折り合いが良いようで本当によかった(笑)。2013-1302013/09/12
夜の女王
15
☆☆☆ ペテロ祭の最中、ブリストルからやってきた商人が殺される。容疑は地元の青年に・・・?読み始めてすぐ、というより犯罪が起きる前に犯人の想像がついてしまった(カドフェルのコメントが伏線)。が、ミステリーとしての面白さは十分にあった。新院長ラドルファスはカドフェルに理解があるよう。院長お墨付きで謎解きに挑め、前にもまして生き生きしていた。ラドルファスの町への計らいは粋だった。ただ、フィリップにエンマは勿体ないよな~・・・。余計なお世話だけど、結婚したら、トマスの残した商売はどうなるのだろう?2015/02/02