内容説明
あらゆる苦しみを超越する方法を見出し、それを平易な言葉で人々に説いてまわったブッダ。感情や執着との付き合い方、自制と慎みの必要、賢人と愚者の違いなど、一つ一つの「教え」は、現代においても人々の心に響き、強力な行動指針となる。『スッタニパータ』と双璧をなす最古の仏典。
目次
対句
勤しみ
心
花にちなんで
愚者
賢者
供養に値する人
千という数にちなんで
悪
暴力
老い
自己
世の中
ブッダ
幸せ
愛しきもの
怒り
汚れ
理に従う人
道
さまざまなこと
地獄
象にちなんで
渇望
出家修行者
行い清き人
著者等紹介
今枝由郎[イマエダヨシロウ]
1947年生まれ。74年フランス国立科学研究センター(CNRS)研究員となり、’91年より同研究ディレクター、2012年に定年退職。’81‐’90年にはブータン国立図書館顧問も務める。専門はチベット歴史文献学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねこ
107
ブッダの「お経」の中で珠玉の双璧とされる「スッタニパータ(経集)」と「ダンマパダ(法句経)」…すべてのものごとに先立ち、すべてをつくり出し、すべてを左右する私たちの心。心は捉え難く、軽々しく、欲するがままに動き回る。この心を制御できれば幸いだ。貪瞋痴(とんじんち)の三毒と呼ばれる三つの否定的活動を制御せよ。貪は好きなものを入手し所有しようとする欲望、瞋は嫌なものを憎み排斥しようとする、正反対の要望であり、痴はその両者を引き起こす、生存欲とも言える根源的で抑え難い衝動に近いもの、すなわち迷妄。…私には無理だ2023/07/28
ジョンノレン
64
スッタニパータ同様ブッダが往時民衆に語った言葉をまとめたもので、今枝由郎氏の訳も注釈もこなれていて、とても読みやすい。とはいえ戒めの言葉は妥協を許さぬ徹底したもので、クッションを間に置かず自分の心にぶつけると結構キツイことも。これは時を置いて繰り返し繰り返し読んで、自分の心に光を当て時に目を逸らしたくなるような部分とも向き合い、来し方と今をじっくり噛み締め、少しずつ自分を高めていく手掛かりとする貴重な素材。何故かいつの間にか、時に訪れる苦悩や苦痛に対する肯定的な鈍感力も身につくような気もする。2024/06/01
道楽モン
21
究極の自己啓発本。すべての煩悩から逃れるには、おのれの執着を消し去ること。云うは易し行うは難しの命題ではあるが、最終的にはここに至るのだ。長い時間に渡ってブッダの言葉を記録した『スッタニパータ』から、テーマに即して選り抜いたのが本書。この後、大乗仏教へと変遷してゆくのであるが、ブッダのエッセンスはこの時点で完成されている。己も含めた全存在に感謝と博愛を持ち、すべての生命は等しく尊い。資本主義という煩悩にまみれ「今だけ金だけ自分だけ」(by 宮台真司)の現代人は、なんと遠い地点で生きているのだろう。2023/08/27
ふみふみ
15
ニーチェは仏陀の教えを衛生学、生理学に例えましたが、実際に法句経である本書や上座仏教の本を読んでなるほどなあと思う次第です。キリスト教やイスラム教などと根本的に違うというか、いわゆる宗教とは別物です。さて、本書の偈の中で個人的に核となるのは「対句」と「心」。是非心に刻み込んで生きたいものですね、まずは暗唱がんばろ(溜息)...2023/10/01
月音
12
対話・説教形式の『スッタニパータ』と違い、本書は対句で教えを簡潔に述べ、内容がよりストレートに心に響く。理に従い、清らかな心で、行い善く、慈しみ深い…。ブッダが目指す境地は、普通の人間にはあまりに現実離れしている理想論だ。現実の人間の心は欲望に流されやすく制御しがたいため、苦しみが生まれ、愚行を重ねる。そんな人間の弱さも、繰り返し述べられている。繰り返される言葉のごとく、日常生活で何度でも立ち止まり、自分を顧みるようにと言われている気がした。2024/06/25
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