内容説明
猛吹雪のなか、往診に向かった先で診た患者とその家族とのやり取りを描く「田舎医者」。人気凋落の断食芸を続ける男、「断食芸人」。奇妙な機械で死刑が執行されている島を舞台にした「流刑地で」など、カフカが生前に発表した8編を収録。「歌姫ヨゼフィーネ、またはハツカネズミ族」も収録。
著者等紹介
カフカ,フランツ[カフカ,フランツ] [Kafka,Franz]
1883‐1924。チェコのプラハ生まれ。父母はユダヤ人。法学博士号を取得後、労働者傷害保険協会に勤め、サラリーマン生活を送りながら執筆を続ける。生前はほとんど無名で、出版された作品もごくわずか。その作品は、何が書かれているか細部はクリアだが、全体としてどういう意味なのか、さまざまな解釈を呼ぶ。1917年に結核と診断され、’24年死去。作品の大部分は、死後、親友マックス・ブロートの編集によって出版され、世界的な評価を得る
丘沢静也[オカザワシズヤ]
1947年生まれ。ドイツ文学者。東京都立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
85
「田舎医者」について。圧倒的な絶望感により、もはや悪夢であることを強く望みました。重症の少年は何かのメタだとは推測できるのですが・・・2025/01/05
中玉ケビン砂糖
60
これを読むと、正直葛藤している自分がいる。「俺のカフカはそんなんじゃない」と抗議する思春期の自分。そして「いや、お前はブロートの広告戦略に乗せられただけだ」と冷静に考える今の自分(実際、有名な「遺稿はすべて処分するよう依頼」などの『カフカ神話』群にはブロートのプロデュースが多分に寄与している可能性が高い)。課題図書として『変身』を読んだ中高生から届いた講演依頼を訳者がやんわり断るという変なエピソード(あとがき)にも、「若者が憧れがちな『わけがわからないからこそ考えるに値するんだ!』という誤読を2022/07/23
優希
49
面白かったです。シュールで思わずニヤリとしたくなるような感覚に襲われました。説明がない分、深読みする楽しみがありますね。2023/07/01
ころこ
39
ポケットマスターピースで今年読んだのをはじめとして、それぞれ数度づつは読んでいる短編群。ただ、『断食芸人』だけはなかったかな。『断食芸人』とは何なのか。「きっとそこには、偉大なる自己否定ってのも含まれているんですよね。」偉大なる自己否定これである。不可能性の、更にその消滅…2022/08/27
サンタマリア
38
『失踪者(アメリカ)』の一部である『ボイラーマン』の主人公カールは純粋さを守っている。彼はアメリカを移動し続ける中で様々な立ち位置に立つわけだが、その際も頑なに純粋さを守り続けているように感じる。その結果どうなるかが分かっていないふりをしているのではないか。他の長編では守る対象が自分の意見であり、だから僕はKには寄り添えず、カールには寄り添ってしまう。果たしてこれはカフカが望んだ読み方なんだろうか。 ああまた、読んだ本とは関係ないことを長々と綴ってしまう。コミュニケーション障害の常套手段として。2023/05/31