内容説明
学生時代の友をふと思い出し、放浪のさなか訪ねた「草砂原の楼閣」で事件に巻き込まれる「臨海楼綺譚」。見知らぬ屋敷に入り込んだ一夜の出来事を描く「その夜の宿」「マレトロワの殿の扉」。芸術という宿命に取り憑かれた旅芸人の「天意とギター」。前作『新アラビア夜話』と合わせ待望の全訳。
著者等紹介
スティーヴンスン[スティーヴンスン] [Stevenson,Robert Louis]
本名、ロバート・ルイス・スティーヴンスン。1850‐1894。イギリスの詩人・小説家・随筆家。エディンバラに生まれ、病弱の身ながら、ヨーロッパ、アメリカ西部、南太平洋の島々を渡り歩き、サモア島で没
南條竹則[ナンジョウタケノリ]
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ワッピー
43
新アラビア夜話の第二部。孤独を愛する偏奇者2人の再会と騎士道に則った戦いの表題作、酔いどれ詩人ヴィヨンの冬の一夜「その夜の宿」、追い詰められた若き騎士の前に開けられた扉「マレトロワの殿の扉」、零落した流し芸人夫妻の窮地「天意とギター」を収録。海辺の寒村で追い詰められた銀行家をかくまう旧友に手を貸す主人公、そして銀行家の令嬢を巡る奇妙な恋愛関係、そして最後の決戦を描く表題作、そして敵から逃れたものの、逃げ込んだ先でも命をかける羽目になった若き騎士の一夜を描いた「マレトロワ~」に魅せられました。おススメ! 2022/06/23
星落秋風五丈原
17
友情を取り愛する人を守る男の友情がよい。2024/08/17
paluko
13
「臨海楼綺譚」なぜかシャーロック・ホームズを連想。イタリア人が物凄く執念深い人種に描かれているからだろうか。「その夜の宿」当時(初出1877年)のヴィヨン研究の進展が背景にあるとのこと。詩人ヴィヨンのブレブレの行動に何とも言えない人間のリアリティを感じる。「マレトロワの殿の扉」結果オーライロマンス。扉に特別な魔力があるのかと思ったら…。「天意とギター」マンの『マリオと魔術師』『ヴェニスに死す』等に出てくる旅回り芸人の、本人たち視点の物語といった趣。2022/06/29
歩月るな
8
南條訳を定期的に摂取するの巻。『爆弾魔』の単行本が出ていたので、文庫化でもしたのかと思ったら、実は訳されていなかった「第二部」がこちらで揃う事に。複雑な主義と心情、信条をぶつけ合うやり取りはまさに一種のコンゲームと言っても良いレベルで、鮮やかなる陥穽、のようなものである。ちょっとヤバい感じの人々が、何をやらかすのか解らないという意味でのヒヤヒヤ感はあるので、さすがの天才的な筆致を味わうのにはやはりうってつけの絢爛な訳文である。後編三話が仏蘭西物であることもあってか、ある意味では時勢を映してもいる、のかも。2022/07/05
qoop
6
著者初期の短編。サスペンスフルな冒険小説の表題作、スリリングな〈その夜の宿〉〈マレトロワの殿の扉〉、音楽家の生き様をスケッチした〈天意とギター〉の四作。最後の作品は芸術的アナキズムを書いているようで現代にも通じるテーマと感じ、印象に残る。しかし、前作同様やはり若書きの間は否めず。翻訳に救われている部分も多いのではないか。2022/08/28