出版社内容情報
『夢解釈』の前期からメタ心理学の理論構築へと進むにあたり、無意識についての考察がいかに発展したかをたどる。
内容説明
「無意識について」を中心に、個人の無意識についての理論の変遷をたどる5つの論文と、集団における個人を超えた無意識の働きについて、社会哲学的かつ文明論的な観点から分析し、後期の『モーセと一神教』などにつながる広い視野を切り開いた『集団心理学と自我分析』を収録。
目次
第1部(心的な出来事の二つの原則の定式(一九一一年)
精神分析における無意識の概念についての論考(一九一二年)
想起、反復、徹底操作(一九一四年)
抑圧(一九一五年)
無意識について(一九一五年))
第2部(『集団心理学と自我分析』(一九二一年))
著者等紹介
フロイト,ジークムント[フロイト,ジークムント] [Freud,Sigmund]
1856‐1939。東欧のモラビアにユダヤ商人の長男として生まれる。幼くしてウィーンに移住。開業医として神経症の治療から始め、人間の心にある無意識や幼児の性欲などを発見、精神分析の理論を構築した。1938年、ナチスの迫害を逃れ、ロンドンに亡命。’39年、癌のため死去
中山元[ナカヤマゲン]
1949年生まれ。哲学者、翻訳家。主著、『思考のトポス』ほか、訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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molysk
59
本書は、無意識に関するフロイトの論文集。本書の前半は、個人の心理における無意識について。心は、意識、前意識、無意識からなるとして、この間の抑圧や防衛といった相互作用を、経済論、力動論、局所論という観点から説明する。本書の後半は、集団心理と無意識の関係を考察する。集団が個人の無意識に与える影響は、集団の指導者と仲間への愛によってもたらされるとする。また、原始的な人間の心理は集団心理に近いものだったとして、現代の軍隊などの集団と古代の原始群族を支配する心理の類似性を指摘して、人類の発達史へと論を進める。2022/11/14
ハルト
7
読了:◎ 第一部は、無意識についての論考で、第二部では、無意識下における集団心理学について語られている。興味深かったのは、第二部の集団心理についてで、人為的集団である、教会と軍隊二つの組織での集団心理の持ち方について考察されている。なぜ人は群れ、そこで理性を失う場合があるのか。パニック、ナルシシズム、同一視をから、集団心理の無意識の手がかりを探る。群衆の無意識というのは、集団における行動としても現れてくるのだと勉強になった。2022/01/26
mori-ful
0
ル・ボンのものなどこれまでの集団心理研究を参照しながら、フロイトが強調するのは指導者=自我理想の重要性。「ル・ボンの言葉を借りれば、集団は圧政を渇望しているのである。原父は集団の理想であり、自我理想に代わって自我を支配することになる。催眠は二人による集団と呼ばれることがあるが、これは正当なのである」。催眠と集団を結びつけているこの箇所は、フロイトが催眠療法への批判から精神分析を開始したことを強調するラカンの読みとも符合する。2025/01/03