出版社内容情報
息をのむエロ・グロ譚、スキャンダルの宝庫である『今昔物語集』。小説家で古典に造詣の深い訳者による独自のセレクトでお届け。
内容説明
芥川龍之介「鼻」「羅生門」の原話のみならず、エロに下卑た笑い、有名人の噂にスキャンダルの宝庫!平安時代末期の民衆や勃興する武士階級、人間味あふれる貴族、僧侶らの姿をリアルに描く、「美しい生ま々々しさ」(芥川)に満ちた日本最大の仏教説話集。厳選91話を収録。
目次
1 男と女の因果な世界
2 武人の誉れ
3 僧侶も人の子、欲心・悪心あり
4 跳梁する霊鬼たち
5 異類と人間
6 滑稽は賢愚貴賎を問わず
7 悪行の〓末
8 仏の救いは摩訶不思議
著者等紹介
大岡玲[オオオカアキラ]
1958年、東京生まれ。作家・東京経済大学教授(日本文学)。東京外国語大学イタリア語科卒、同大学院修了。1989年『黄昏のストーム・シーディング』で三島由紀夫賞、’90年『表層生活』で芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
58
本編もこなれた現代語で勿論面白かったが、編訳者解説の「5W1H」論が刺激的。日文学史上最大級の仏教説話集ではあるが、いかんせん作者は未詳。ただその核は散逸した『宇治大納言物語』にあり、さらに遡って『日本霊異記』や大陸渡来の文献からの断片要素も窺えるので、遺漏なくほぼほぼ網羅はしているもののその膨大さが却って全体像を漠とさせている、というのがアカデミズム的な歯痒さだった。成立時期については振れ幅こそあるものの、科学的測定や収録作の傾向からある程度の絞り込みはでき割愛する。面白いのは、ある程度の自明性・蓋然性2021/11/03
ネコベス
28
平安末期に編纂された今昔物語から訳者が選りすぐった91話を収録した新訳説話集。貴族の痴話喧嘩や盗賊の跋扈、仏教説話に鬼や亡霊、亀に狐まで登場する小エピソードの連なりが小噺のようで気楽に読める。前世の報いや因果応報思想がその時代の根底に感じられる。日本昔話で見た「羅生門の鬼」「安珍清姫」「猿神退治」、芥川龍之介の「鼻」や「羅生門」の元ネタも確認出来て楽しめた。2021/11/10
たんかれ~
16
平安時代末期に書かれたという仏教説話集。全部で千話くらいあるうち、本書では91話を抜粋。淡々と描かれているけど、どれも人間臭くて面白い。芥川龍之介など多くの作家が著作のヒントにしたそう。そういえば井上靖の作品で読んだ話もありました。編者は不明だけど、それほど高位ではない僧侶がライフワーク的に書いたのではとのこと。納得。読み易い現代語訳に感謝!2021/12/11
こちょうのユメ
13
今昔物語を現代語訳で読めるのはうれしい。91の説話集は平安時代の貴族から一般大衆まで、面白くてヘンなエピソードを集めたもの。訳者によると「興味深い出来事がウワサとしてつたえられ、やがて物語として結晶したもの」だそうだ。中には、腫瘍の治療薬として胎児の肝を手にいれる平貞盛の残忍で戦慄する話。書類改ざんを命じた書記を口封じに殺す、今でも似たような話。また貴族、僧侶、民衆を問わず簡単にエッチをする話など、今と一緒じゃんと思える話が数多くある。こうしてみると人間の本性は、大昔からたいして変わっていないようだ。2023/01/06
ハルト
10
読了:◎ 日本最大の仏教説話集。そのなかでも、選りすぐりの91話が収められている。読んでいておもしろかったのは、人間の業をまざまざと描いてあるから。『説話文学はゴシップの文学である』とあるように、天皇、貴族、僧侶、武士、民衆と、上から下々の者まで、身分年齢男女問わず、愉快に楽しく噂として語り、おおらかで豊かで生き生きと滑稽譚や悲劇喜劇等にしているところがよかった。古典と云えども、肩肘張らずに楽しめる。訳も読みやすかった。2021/10/09