内容説明
野生の木苺を食べたことがきっかけで、男爵の心と体が二重の感覚に支配されていく「木苺のなかの魂」、“真実の口”ドン・ペッピーノの忠義心が試練の数々に直面する寓話風の「三匹のカタツムリ」ほか、世紀をまたいで魅力が見直される9作家の、粒ぞろいの知られざる傑作を収録。
著者等紹介
橋本勝雄[ハシモトカツオ]
1967年生まれ。京都大学文学部卒業、同大学院博士後期課程単位取得退学。現在、京都外国語大学教授。訳書に『プラハの墓地』(エーコ)(第2回須賀敦子翻訳賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
116
イタリアの怪奇幻想小説ということでかなり期待したのですが、若干裏切られた感じでした。私はイタリアの作家ですとブッツアーティが非常に好みでよく読んでいるのですがちょっとパンチが足りないというか印象が薄い気がしました。この中では「黒のビショップ」が一番いいという気がします。2021/11/11
HANA
73
死後の魂、不穏なチェス、神経症、西暦二千二百二十二年までの歴史、童話(アナルセックスあり)。今まであまり顧みられてこなかった19世紀イタリアの怪奇小説の数々。解説でも触れられたが、この時期のイタリアの怪奇小説はゴーティエ等、同時代の影響を強く受けているらしく読んでいてもそれはひしひしと感じられる。逆に言えば彼らの作品が好きならば喜べるはず。私は大満足でした。幽霊を扱った物に佳作怪作が多いが、ミステリじみた物やSFじみた物など収録作も幅広く楽しめる一冊でした。あと謎の日本人「ファ・ゴア・ニ」とか出てくるし。2021/07/10
sin
70
まえがきで編集の主旨を解説戴くのは致し方ないが、それに乗じて作品のあらすじを披露するその神経が理解できない。確かに前段におことわりはされているが、だとしても後に取っておくべきだ。イジーノ・端から見たらある意味滑稽譚。ヴィットリオ・我が儘なジャポネーゼの霊。レミージョ・宗教家の高慢。アッリーゴ・白人の驕り。カルロ・忘却を忘れ、死への恐怖故に死す。カミッロ・富める者の自己満足。ルイージ・動物磁気に催眠からの発想か?イッポリト・無邪気な未来創造…否、焚書滅猫は論外の愚考。ヴィットリオ・法螺噺にしては発想が貧困。2021/07/24
みやび
49
想像していたものとは少し違っている作品も幾つかあったけれど、どの作品もなかなかに面白く、帯にある通り粒揃いの傑作が揃っていた。「木苺の中の魂」「死後の告解」「黒のビショップ」「三匹のカタツムリ」辺りが特に印象的。「魔術師」もラストの皮肉が効いていて良かった。「ファ・ゴア・二の幽霊」は、イタリアにおけるジャポニズムが創作に表れた作品との事だが、とても日本とは思えない描写の数々に、19世紀のイタリアでの異国日本のイメージがどんなものだったのかを垣間見る事が出来て、怪奇幻想とは別の部分でも楽しめた。2021/02/28
いちろく
38
まえがきにより選作の基準を、あとがきにより当時のイタリア文学の土壌説明が挿入されている短篇集。私には、まえがきとあとがきのお陰で、作品の世界観が伝わりやすかった。19世紀後半のイタリアは怪奇幻想文学の黎明期である点や20世紀に開花する通過点である点を踏まえたら、見方も変わった。まえがき、9つの短篇、あとがきを合わせて一つの作品という印象の短篇集だった。2021/06/04
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