内容説明
異教信仰の研究者が自らの計画のために歳の離れた従兄弟の少年を引き取る「消えた心臓」。スウェーデンのある地方で発見した古文書のなかに記された“黒の巡礼”から戻った人物の来歴を探る「マグヌス伯爵」など9篇を収録。「英国が生んだ最高の怪談作家」ジェイムズの傑作短篇集。
著者等紹介
ジェイムズ,モンタギュー・ローズ[ジェイムズ,モンタギューローズ] [James,Montague Rhodes]
1862‐1936。イギリスの作家、中世学者。英国国教会の牧師の家に生まれる。名門イートン校からケンブリッジ大学キングズ学寮に入学。優秀な成績を収め、同学寮の特別研究員となる。同大学フィッツウィリアム博物館の館長、キングズ学寮学寮長、同大学副学長を歴任し、1918年母校イートン校の校長に就任
南條竹則[ナンジョウタケノリ]
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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KAZOO
105
M.R.ジェイムズの作品を集めたものでかなり怖い話を期待したのですが、何方かというとゴシック的な感じの作品が多いように感じました。いぜんに怪奇小説傑作集で「ポインター氏の日録」を読んだときと同じような感じの作品が「あるべリックの貼込帳」でした。作者は古代学の権威であるということで古版画、古書、古跡などが題材となっているケースが多いようです。ラブクラフトに比べると怖さがない感じですが雰囲気は十分に演出されている気がしました。 2022/10/23
sin
71
改めて読み返してみると、存外にド直球な怪談である。化けものの手、生け贄の儀式、蠢く銅版画、毬のような毒蜘蛛、存在しない部屋の住人、憑依する死者、シーツに刻まれた顔、守護する蟇男と…シンプルなストーリーのクライマックスに訪れる恐怖の数々、登場人物と舞台を替えただけで上質なジャパニーズホラーに早変わり…は、検討違いかもしれないけれど、口説くない語り口と相まって、昔から大好物のゴーストストーリーです。2020/08/17
syaori
61
怪談集。作者の本業は中世学者で、写本や聖書外典の研究で有名なのだそうですが、その素養は本書でもいかんなく発揮されているように感じます。アン王朝様式の邸宅や荘園領主の霊廟で起こる事件は、聖書の警句や古い写本、錬金術などと複雑に絡み合って神秘的でおぞましく上品な怪異譚を現出せしめていて、古風で趣のある怪談を堪能しました。2022/10/21
あたびー
46
紀田順訳の創元版は既読。読書会のために読みました。ジェイムズの短編集の内「好古家の怪談集」が収録されています。2つ(場所により原文と3つ)比べながら読んだら、違いも見つけたり。創元版にはM.R.ジェイムズが友人に挿絵を描いてもらったという、その挿絵も少し載っていますので、やはり合わせて読むと良いかもしれません。ジェイムズの怪談には恐ろしい怪物や霊がいる一方、どこか朗らかな明るいユーモアがあり、そこがとにかく大好きです。今回はBBCのドラマ(字幕がない😅)を見合わせながら読み進めて、充実です。2022/03/08
有理数
22
怖い。古文書、廃墟、異様な木、銅版画、黒い巡礼……。それらに関わった人々の織り成す怪異譚。「秦皮の木」は再読だがやはり傑作。表題作「マグヌス伯爵」や「十三号室」も大変に怖かった。登場する者たちは好奇心のあるもの、冒険家、学者で、その道すがらに「それら」に出会ってしまう。あるいは「それら」にまつわる話を聞いてしまう。そこから引き返せない境界を越えて、違和感を抱えたときにはもう遅い。あり得ない状況と、あり得ない存在。見えていても見えていなくても、それらはじわりと迫りくる。面白かった。ジェイムズもっと読みたい。2020/08/06
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