出版社内容情報
様々な出来事に巻き込まれながら、成長していくオリバーの姿を通して人間の良心と残酷さを描いたディケンズの代表作の一つ。
内容説明
生まれ育った救貧院でも、徒弟として売られた葬儀屋でも、人間的な扱いを受けたことのない孤児オリバー。道端で会った気さくな少年が、ロンドンで住居や仕事を世話してくれる人物を紹介するというが…。苛酷な運命に翻弄される少年とそれを取り巻く人々をドラマチックに描く傑作。
著者等紹介
ディケンズ,チャールズ[ディケンズ,チャールズ] [Dickens,Charles]
1812‐1870。イギリスの作家。親が借金を抱え、ロンドンのスラム街で少年時代を過ごす。法律事務所の使い走り、速記者などをしながら大英博物館に通って勉強し、新聞記者になる。ジャーナリストの目で社会を凝視した作品は大衆に歓迎された。『クリスマス・キャロル』など
唐戸信嘉[カラトノブヨシ]
1980年生まれ。立教大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。茨城キリスト教大学専任講師。イギリス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
40
40数年ぶりの再読。孤児オリバーの救貧院における悲惨な生活(特に食べ物を求めるくだり)以外はほとんど忘れていた。その後の彼は悪漢たちの一味に加えられ、窃盗の濡れ衣を着せられと、ますます八方ふさがりに。救いの手も差し伸べられるものの、悪漢たちによりまたもとの生活に戻されるあたり、読んでいても何とももどかしい。それでも(バルザックの諸作品とは異なり)最後には悪人は罰せられることになるが、この間オリバーが完全に受け身であり、主人公としての存在感は希薄。善悪の狭間で悩むナンシーを筆頭に、悪人の造形がむしろ際立つ。2024/05/02
tosca
32
あまりにも有名な小説なので大体のあらすじは分かっていたが、小説を読むのは初めて。19世紀ヴィクトリア朝時代英国の貧困層への差別や虐待は酷い。弱者に非情な悪いヤツが意地悪過ぎて、さすがこの名作、何度も映画化されるだけあり、次から次とハラハラドキドキ振り回されて小説の面白さを堪能した。以前に読んだ本で、ヴィクトリア朝ロンドンについて書かれた「不潔都市ロンドン」、ヴィクトリア時代に書かれたルポ「ロンドンの路地裏生活誌」、この2冊がヴィクトリア朝時代の貧しく煤けたロンドンの下町をイメージする際に助けになっている2022/08/30
Miyoshi Hirotaka
27
19世紀前半のロンドンの最下層を描いた物語。上流階級に属するオリバーは、偶然に救貧院で生まれ、9歳で徒弟に出され、過酷な環境から脱走し、窃盗団に拾われる。ユダヤ人首領と仲間、その悪に染まる少年達、オリバーが体現する善、善悪の狭間で悩む少女の描写で社会悪が浮き彫りになる。救貧院の汚職、児童売買や過酷な労働、飲酒、闇の職業、公開処刑、階級問題、出生の秘密や相続問題の背景描写も細かい。ディケンズは当時の国際的人気作家。同時代の作家らに社会問題への視点を与え、謎解きや一気に読ませる筆致は推理小説の源流になった。2024/06/02
きゃれら
26
ディケンズってこんなに面白かったんだと目を開かれた思い。朝の連続ドラマのような、先がともかく気になる展開が続いていき、いったん読み始めたら止められない。甘さとしょっぱさが微妙に混ぜられたスナック菓子のようだ。しかも、都市に巣食う貧困、犯罪の温床などについてジャーナリスティックなレポートであり、登場する犯罪者たちのキャラクターのリアルさも際立っている。特にナンシーの複雑さは深く心に訴えるものがあった。まだ数冊しか読んでないけれど、ディケンズの中ではいまのところ一番好きな作品だ。2025/01/30
秋良
20
【G1000】ドバイ滞在中に読み始めて、帰国して読み終えた。現実は世界の最上層、作中は世界の最下層でギャップがすごかった。孤児のオリバーが悪の道に引き込まれてから幸せを見つけるまでの数奇な運命。といっても彼が自分から動いて何かをするわけではなく、流されてくシンデレラストーリーなのでカタルシスに欠ける部分はあった。偶像めいたローズよりも娼婦のナンシーが光っていて、時折見せる善良さやオリバーへの愛情、DV男のサイクスと離れられないところ、最期まで物凄くリアリティがある。2022/11/11
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- 和書
- 保険業法 〈2015〉