出版社内容情報
ルゴーネスの短編のなかでもとりわけ面白く優れた短編を厳選。幻想小説という枠に収まらない、バラエティに富んだ作品が多い。
内容説明
エジプトの墳墓発掘に携わった貴族の死は、現場の“死の芳香”のせいなのか?奇しくも同じ香りを纏う女が現れ…史実を元にした連作の表題作、画期的な装置の発明者の最期を描く「オメガ波」など、科学精神と幻想に満ちた、近代アルゼンチンを代表する作家の傑作18編。
著者等紹介
ルゴーネス,レオポルド[ルゴーネス,レオポルド] [Lugones,Leopoldo]
1874‐1938。アルゼンチンの作家、ジャーナリスト。23歳で発表した詩集『黄金の山々』によって、モデルニスモ(近代派)文学の旗手と高く評価される。主要紙の記者を務め、急進的新聞の創刊に関わるなど、ジャーナリストとしても活躍する一方、教育改革にも力を注ぐ。生涯多くの詩や政治的論考、150もの短編小説を書き、ボルヘス、コルタサルなどいわゆる「ラプラタ幻想文学」の源流に位置する作家とされる
大西亮[オオニシマコト]
法政大学国際文化学部教授。専門はラテンアメリカ現代文学。1969年神奈川県生まれ。神戸市外国語大学大学院博士課程修了(文学博士)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
107
はじめての作家です。南米の作家のようですがあまりそのような感じを受けませんでした。短編がカアなり収められていて私は結構楽しむことができました。数学や物理的な話もあったりします。あるいは考古学的、幻想文学、土俗的な話など幅の広い感じがします。訳もわかりやすく解説もかなり詳細で今後その他の作品も読みたくなりました。2020/04/05
nuit@積読消化中
85
いや〜、ある意味すごい作家さんにまた出会えて本当に嬉しい。こちらは真剣に奇妙な話しを聞いていたつもりが、なぜか意図せず愉快な結末が待っているという(笑)。とくに「不可解な現象」のラストなんかは笑わせるつもりなんだろうか。飲みかけのお茶を吹いてしまった(笑)。また個人的には奇妙な考えに取り憑かれた狂人の末路を描いた「円の発見」もツボ。そして巻末解説にて、著者の呪われた一族のことを知り、ますます興味深い作家である。2020/03/07
巨峰
63
面妖・怪奇の世界へようこそ。アルゼンチンの古典的な怪奇小説18篇が分厚くもない文庫に収録されています。短いものは小説とは言えないような断片のものも多くて、もう少し頁数があればもっと面白くなったのにと思いました。素材が転がっている感じ。表題作2編は連作になっています。個人的には最後のスラルカマルが好きですが、これが一番通俗的な小説の形を纏っているからかもしれませんね。気になった編をもう一度読んでみないと~2021/05/05
HANA
61
20世紀初頭のラテンアメリカの作家による幻想小説集。ラプラタ幻想文学の祖と言われているらしく、後世のラテンアメリカのマジックリアリズムを思わせる作風。ただ作中に当時の最先端科学やオリエンタリズムを取り入れている部分も多く、何となく科学と幻想が分離していない時期、ラテンアメリカの地域性より当時の時代性を感じてしまう所も多かった。どの話も短く突き放されたような印象を受けるけど、面白く読めたのはやはり表題作二編と「オメガ波」等の科学と幻想が分離していない諸編。著者の生涯や一族の因縁を描いた解説も読み応えあり。2020/07/05
sin
61
紳士的な法螺噺、但しその律儀な姿勢ゆえか不可解な出来事に対して科学を擬態した架空理論による無意味な観念の冗長句で煙に撒くのは遺憾ともし難い。その中にあって『アルミータ』のようにフォークロアな伝承譚は見過ごせない魅力的な物語だと感じる。意味論を排した率直な語りに却って真実味を感じとれるから不思議だ。2020/03/23