出版社内容情報
現実とはなにか、をやさしく問う異世界ファンタジー。
内容説明
10歳の男の子が罰で閉じ込められた部屋で、古い鏡に映ったチェスの駒に誘われる。不思議な「向こうの世界」に入り込むと、そこには祖母や泥棒、若い男女らがいて…。鬼才セルジョ・トーファノの挿絵との貴重なコラボが実現した、20世紀前半イタリア文学を代表する異世界幻想譚!
著者等紹介
ボンテンペッリ,マッシモ[ボンテンペッリ,マッシモ] [Bontempelli,Massimo]
1878‐1960。イタリアの小説家、詩人、劇作家。ロンバルディア地方のコモに生まれる。トリノ大学で哲学、文学の学位を取得し卒業後、国語教師を経て詩や韻文劇、短篇小説を発表。その後未来派のマリネッティや、キリコ、ピランデッロらの影響下で独自の文学的志向を発展させ『強烈な生活』『鏡の前のチェス盤』などを発表し、イタリア文学の革新を図る。1926年、ヨーロッパ文化に開かれた編集方針をとる雑誌「900」を創刊。以後、『ふたりの母の子』『アドリアとその子どもたちの生と死』『時の中の人々』などを通し「魔術的リアリズム」の詩学を展開
橋本勝雄[ハシモトカツオ]
1967年生まれ。京都大学文学部卒業、同大学院博士後期課程単位取得退学。現在、京都外国語大学教授。訳書に『プラハの墓地』(エーコ)(第2回須賀敦子翻訳賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
120
このような文庫に入るの面白い感じがしました。挿絵がおはいっている児童向けの本だと思いました。最初に読みだしてルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」を思い出しましたがやはり解説でその関連を書かれています。この著者は結構面白い小説を書くということで「わが夢の女」を愛読したこともありました。短い作品ですが楽しめました。2017/09/03
藤月はな(灯れ松明の火)
90
おそらく、「鏡の中にいる<私>は、私が見ていない時に勝手に動いているのじゃないかしら?」と思ったことがある人には、この本は懐かしい気持ちにさせられるだろう。「鏡の中にいる<私>は存在の危機に瀕してしまう。それは自分の「実存」の危機に繋がるのか」という問はパラレルSFみたいで考えていてワクワクする。個人的に鏡の世界で出会ったマネキンの言葉と「喧嘩」の章の寓意性が興味深いです。そしてセルジョ・トーファノ氏によるシンプルで可笑しみのある絵も良い味を出しています。2017/11/19
佐島楓
55
内容的にもチェス=戦争の風刺小説なのかと思い、年譜を見てみたら「?」となる経歴だった。イタリアの小説はほとんど読んだことがないはずなので、歴史や文化も含めて勉強していきたい。2019/07/12
まりお
47
鏡の向こう側に招かれた少年。向こう側では人のように振る舞うチェスの駒、鏡に写ったものがそこにある世界があった。チェスの駒がチェスの試合を始める時、あんなにどんちゃん騒ぎを起こしていた駒達は一瞬にして静まりかえる。自分達は物である、それを分かっているのだろう。不思議な世界であっても、物は物でしかない。2017/09/02
財布にジャック
37
不思議の国のアリスみたいな雰囲気ではありましたが、物語に入り込めずにしらけてしまう自分がいました。もっと純粋な頃に読んだら違ったのかもしれません。2019/06/25