出版社内容情報
少年の魂の成長の軌跡を赤裸々に描き、当初は偽名で出版されたヘッセの異色作。
内容説明
些細な嘘をついたために不良に強請られていたエーミール。だが転校してきたデーミアンと仲良くなるや、不良は近づきもしなくなる。デーミアンの謎めいた人柄と思想に影響されたエーミールは、やがて真の自己を求めて深く苦悩するようになる。少年の魂の遍歴と成長を見事に描いた傑作。
著者等紹介
ヘッセ,ヘルマン[ヘッセ,ヘルマン] [Hesse,Hermann]
1877‐1962。ドイツの作家。両親はキリスト教伝道者。神学校に進むが学校生活になじめず、神経を病み退学。その後も高校を退学、3日で書店を退職するなど挫折を繰り返す。しかし独学で勉強し、27歳で出した初めての小説『ペーター・カーメンツィント』で成功を収め、有名作家となる。1946年ノーベル文学賞受賞。1962年脳内出血のため自宅で睡眠中に死去
酒寄進一[サカヨリシンイチ]
1958年生まれ。ドイツ文学翻訳家。和光大学教授。『犯罪』(シーラッハ)で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
102
ヘッセの小説は中学高校の時にかなり読んだ覚えがあります。ただこの作品のイメージはあまり覚えていません。車輪の下やシッダールタはおぼろげながら覚えています。今回は読みやすい訳で読んだのですが、エミールが青春時代に遭遇した精神的な祖師のような感じをデミアンに受けました。よく読んでみるとかなり難しい小説だということを感じました。若い頃はあまり深く考えずに読んでいたようです。2022/07/23
naoっぴ
82
主人公シンクレアの自我と魂の放浪の物語。謎めいた雰囲気を持つデーミアンとの出会いから神秘的な思想に傾倒し、自分たちには特別な「しるし」があるとして互いに結びつこうとするところには選民思想の匂いが感じられたが、思春期にありがちな自意識なのだろう。大人びた友人への憧憬や、特別な異性への崇拝、性に対する抑えがたい嫌悪と欲求など、彼らの心の揺れ動きは青く瑞々しい。自分自身に「成る」ため、自己をどこまでも追求し苦悩する姿も成長の過程か。新訳も大変読みやすく、面白かった。2018/11/14
巨峰
80
第一次世界大戦前、旧世界の終わりを迎えようとするヨーロッパ。古く伝統的で精神的な世界と新しい神のない世界とのせめぎあいのなか、振り子のように振られてしまう若いシンクレアの物語、デーミアンは彼に影響を与える上級生。「しるし」とか選民思想的な主人公たちの会話は気に入らないけど、若い頃に読んでいたら感銘を受けたかもしれない。そう若い人向けの文学だとおもう。自分が自分になるために殻を破るためにもがかなければならない。2017/09/02
まりお
53
デーミアンはシンクレアの導き手、困ったときに助言をくれる魔法使いのお爺さんのようだ。私の周りにもデーミアンのような人はいるだろう。それに気づけるか、受け入れられるか、自分の内側にストンと落とせるか。卵のからを破れるかどうかは、それで決まるのではないか。2017/09/10
yumiha
52
某新聞の書評で桜庭一樹が、「一秒でも若いうちに読むべき本」と言うので、未読だったから手に取った。言うなれば、自己とは何者か?という追究が、理想的な友人デーミアン(対象化されたもう一人の自分?)とともに推し進められる。自分の中に善もあるけれど、悪もある。驕りや卑下や嫉みなど感じたことのない人はいないはず。だから、神でもあり悪魔でもあるアブラクサスという神を見つけたことは、悪習の中でもがく自分も受け入れることができる。そういう悩みを抱く若い頃なら、救いになる神であろう。すでに立派(?)なおばさんの私よりも。2021/07/08