出版社内容情報
ヴォルテール[ヴォルテール]
斉藤悦則[サイトウ ヨシノリ]
内容説明
イギリスにおける信教の自由、議会政治を賛美し、ロックの思想、ニュートンの科学などの考察を書簡形式で綴ったヴォルテールの思想の原点。フランス社会の遅れを痛烈に批判し発禁処分にされたことで大ベストセラーとなった。のちの啓蒙思想家たちに大きな影響を与えた初期の代表作。
目次
クエーカーについて
イギリス国教について
長老派について
ソッツィーニ派、アリウス派、反三位一体派について
国会について
統治について
商業について
種痘について
大法官ベーコンについて
ロック氏について〔ほか〕
著者等紹介
ヴォルテール[ヴォルテール] [Voltaire]
1694‐1778。フランスの思想家・作家。パリに生まれる。早くから創作を志し、処女作『エディップ(オイディプス)』(1718年)がコメディー・フランセーズで大成功を収める。決闘騒動でバスティーユに投獄された後、イギリスに亡命。この時の見聞をもとに当時のフランス社会を批判した『哲学書簡』(’34年)を刊行するも、即発禁処分となる。プロイセンのフリードリヒ2世からの招聘をうけるなど、思想・信教・表現の自由や寛容を唱える知識人として、その影響力はヨーロッパ全域に及んだ
斉藤悦則[サイトウヨシノリ]
1947年生まれ。元鹿児島県立短期大学教員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎ツトム
16
ひとまず心にぐっと来た文章をここに写す。「聖書は、自然学にかんしては、レベルをずっと世俗の通念にあわせてきた。(中略)聖書はこうした民衆の偏見にしたがって語っているのである。聖書はわれわれを自然学者にするためにわれわれに与えられたのではない」他にも理性から遠く離れようとしている現代の超大国の人々に読ませたいフレーズがたくさん。2025/02/10
春ドーナツ
13
フランス語が読めないからあれだけれど、表題は意訳ではなく逐語訳だったみたい。19世紀になって、宗教に関する言論の自由が確立されたのか、教会権力がおとがめできなくなったのか、よくわからないが、ヴォルテールの頃は、というかルソーの頃までは、ちょっと批判的なことを書くと、即、発禁になっていたようだ。ルターの宗教改革が16世紀で、上記のタブーからの解禁がどのような経緯によるものなのか、ちょっと気になる。近代ドイツの歴史をたどれば、導きの糸がにょろにょろ出てくるのかしら。パスカルさん、そんなこと言ってたのかと思う。2024/01/28
猫丸
13
狭い意味での哲学書ではない。スコラ学の硬直化、宗教の典礼化を見かねて、ある意味野蛮なイギリスの自由な精神を称揚する文化通信。立ち位置は健全な保守派といったところであり、まったく過激な主張はないのだが、これでも発禁だそうだ。フランスアカデミーが虚飾に満ちている、との指摘がすでにこの段階で出ている。のちにペタンがアカデミー委員に選出された際のヴァレリーの演説など、歯の浮くような空虚な美辞麗句だらけだったな。イギリスに歴史書はない。喜劇はあるが悲劇はない。沙翁何するものぞ、を実践している。江戸っ子みたいだ。2019/05/29
ころこ
13
クエーカーの紹介から始まり、パスカルで終わる本書の意図が、解説で分かり易く説明されています。最後にあるパスカル批判は示唆を受けました。あらゆる点でフランスとイギリスを比較している中で、デカルトとニュートンを比較しています。一見異色の組み合わせですが、哲学と科学が近かった時代の元々の哲学の役割に忠実な議論が行われます。イギリス・ニュートンが評価され、フランス・デカルトが批判されているのは本書の流れ通りですが、ニュートンの方が評価されているのは端的に科学的真実だったからです。さらに無限と年代学についてのエッセ2017/11/02
吟遊
11
読みやすい新訳。クエーカー教徒のはなしから始まるのも面白い。イギリス見聞録。パンセ嫌いはわかる気もする。骨太ヴォルテールもまたモラリストの系譜ですね。2019/11/24