出版社内容情報
ジュネ[ジュネ]
宇野邦一[ウノ クニイチ]
内容説明
監獄と少年院を舞台に、アルカモーヌ、ビュルカン、ディヴェールら「薔薇」に譬えられる美しい囚人たちとジュネ自身をめぐる、暴力と肉体の物語。同性愛者であり泥棒でもあった作家が、悪と性に彩られた監獄世界を緻密かつ幻想的に描くことで、そこに聖性を発見していく驚異の書。精密な読みに基づくこの新訳により、まったく新しいジュネ像が見えてくる!
著者等紹介
ジュネ,ジャン[ジュネ,ジャン] [Genet,Jean]
1910‐1986。フランスの作家、詩人。1910年パリに生まれる。’42年、『花のノートルダム』を書き始め、’44年、同作が文芸誌に掲載されデビュー
宇野邦一[ウノクニイチ]
フランス文学者、批評家。1948年島根県生まれ。京都大学文学部仏文科卒業。パリ第8大学でジル・ドゥルーズの指導を受け、アントナン・アルトーについての研究で1980年博士号取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
133
再読。若者は破壊的行動や破滅への憧れを持つ。見よう見まねでしてみたところで、本当に真からその世界に身を委ねるものは稀で、そこから戻ってこれる者はほとんどいない。ジュネはその稀有な者で、その中でも美しい文章を書く天分に恵まれた奇跡的な一人。男に欲情する男が刑務所に入れば、愛欲にまみれるだけ。多くは泥棒や女衒。その中で、少年であった時に9才の少女を殺した死刑囚は、皆から一歩おかれ、ジュネは彼を夢想のなかで神格化していく。男同士で愛しあってはいても、世間と切り離された中で少しずつ正気を失っていく男たち(続き)2017/01/06
青蓮
102
ちょこちょこ読んで何とか読了しましたが、正直に言って私には難しくて文字を追うのが精一杯でした。ジュネ独特の抽象的な描写や思考が散りばめられていて、小説と言うよりは何かの思想、哲学書のようでした。この手の本は読むのに「慣れ」も必要なのかな。また次、再読した時はもう少し理解できるようになっていたい。2017/01/08
優希
95
面白かったです。聖と俗が入り混じり、醜悪なのに崇高な世界がありました。「薔薇」と喩えられる美しい囚人たちとの暴力と肉体と性が幻想的に描かれています。同性愛でありながら切なさと爽やかさを感じさせるのは流石ジュネ。スキャンダラスでありながら輝きを放つ稀有な作品と言えるでしょう。2017/04/22
syaori
56
「この本で僕が望むのは」「犯罪世界の栄光に服従し、その魅力に支配された嘆かわしい無気力状態から、そして屈辱的などん底の生活からどう解放されたかという、僕の体験を明らかにすることだ」。そうならば、この本は「おぞましい」囚人を美しい薔薇にするジュネの「秘密の領分」の説明書なのかもしれません。同時に「甘美な思い出の靄」の中の少年院を、15年の歳月を通して映し出すフォントヴロー刑務所、そこでかつての少年たちと再び出会い、愛し合い、そして起きる奇跡を語ることが、その神話が作者には必要だったのではないかと思いました。2018/12/07
優希
46
再読です。監獄と少年院が舞台でありながら美しく幻想的な世界が広がっていました。薔薇にたとえられる囚人とジュネ自身をめぐる暴力と肉体の物語は聖性を発見できると言えるでしょう。同性愛者で泥棒であったジュネだからこそ描ける悪と性に彩られた監獄世界の濃密さ。同性愛の美学に酔いました。2024/04/14
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