出版社内容情報
モーパッサン[モーパッサン]
太田浩一[オオタ コウイチ]
内容説明
プロイセン軍を避けて街を出た馬車で、“脂肪の塊”という愛称の娼婦と乗りあわせたブルジョワ、貴族、修道女たち。人間のもつ醜いエゴイズム、好色さを痛烈に描いた「脂肪の塊」と、イタリア旅行で出会った娘との思い出を綴った「ロンドリ姉妹」など、ヴァラエティに富む中・短篇全10作を収録。
著者等紹介
モーパッサン,ギィ・ド[モーパッサン,ギィド] [Maupassant,Guy de]
1850‐1893。1850年ノルマンディ生まれ。パリ大学在学中に普仏戦争に遊撃隊員として従軍。戦場での苛烈な体験が、のちの厭世的な作風に大きな影響を与えたといわれる。その後海軍省に勤務。母の紹介でフローベールと知り合い、作品指導を受ける。30歳の時に発表した「脂肪の塊」が絶賛され、作家専業となり、33歳の時に発表した『女の一生』はベストセラーになった。旺盛な著作活動を続けたが神経系の発作に襲われ、苦痛から逃れるために薬物に溺れた末、自殺未遂事件を起こしパリの精神科病院にて死去
太田浩一[オオタコウイチ]
フランス文学翻訳家。中央大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
156
最初の一編の美しさが嬉しかった。表題二作の嫌な感じを思いながら本を開いたから。教会に光降り注ぐ場面が心に残る。思えば、彼の作品は読み手が追うものは字であるのに映像を見せる。本を閉じて想うのは文章ではなく画像や動画。馬車でお上品な人々が貪り食べる姿や若く丸々と太った娼婦が決まり悪そうな金持ちの間で嗚咽する様子。ジェノバを発つ時に男が浮かべるニヤッとした顔。名作とはかくあるものかしら。読後に残るイヤな感じにさらに加わる感嘆やら驚き。『脂肪の塊』慰安婦の気持ちをわかったように話すものではない、何者も…と思う。2016/11/21
巨峰
85
「女の一生」はピンとこなかったけど、この短編集は大変面白かった。様々なジャンルから選りすぐりの10作。全部面白かったし、質が高いと思った。姉妹丼のはなしとか。2016/10/10
藤月はな(灯れ松明の火)
83
人生の悲喜交々を描いた中短編集。西部劇『駅馬車』の元ネタになった『脂肪の塊』は再読しても胸が悪くなります。人は変われない。状況が以前のようになれば、その地位にしがみつくのは当たり前。それは私自身も同じなのだという自己への嫌悪感が掻き立てられるからこそ、この作品は苦く、後を引くのだ。塞翁が馬な「冷たいココはいかが!」は解釈が無尽なのが心憎い。「マドモアゼル・フィフィ」は真の淑女とは誰かは明白。「雨傘」はやっぱり、男より女の方が経済的な駆け引きは本能的に上手い事を良く、表現していると唸らずにはいられない。2016/10/29
マエダ
67
面白いなモーパッサン、ロンドリ姉妹は秀逸。”モーパッサンを攻めようと思う。”と昔岩波の脂肪の塊を読んだ時に言ったような気がする。2019/02/28
えりか
56
「脂肪の塊」悲しい話だ。やるせない。どうしてこんなに冷酷な仕打ちができるのだろう。みんな自分のことしか考えてない。「私たちのためにあなたが犠牲になるのは当たり前のことだ」そんな言い分は悲しすぎる。保身のためにはコロリと態度を変えて、人を持ち上げたかと思えば叩き落とす。ブルジョア階級の彼らは滑稽すぎる。人をことごとく踏みにじり、娼婦の威厳は失われた。「目的は手段を正当化する、動機が純粋であれば、どんな行いも赦される」なんて都合のよい言葉だろう。人の自尊心や保身が突き刺さり、痛くて悔しくて涙が出る。2016/09/11