出版社内容情報
自分の生命と愛する人の幸せを引きかえる究極の愛。革命に揺れるパリとロンドンを舞台に3人の運命を描いた壮大な歴史ロマン。
内容説明
スパイ容疑で逮捕されたフランス亡命貴族のロンドンでの裁判。とある医師の娘が証人となり、弁護士の奇策もあって被告は罪を免れる。一方パリの居酒屋では血腥い計画が着々と練られ…。二つの首都の間で絡み合った因縁の糸が解けていくなか、革命の足音が近づいてくる。(全2巻)
著者等紹介
ディケンズ,チャールズ[ディケンズ,チャールズ] [Dickens,Charles]
1812‐1870。イギリスの作家
池央耿[イケヒロアキ]
1940年生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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柊文庫本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
141
革命前夜のフランスと英国を股にかけた物語。医者の娘に想いを寄せる瓜二つの顔を持つ二人の男というメロドラマな作風。18年もの監禁生活を送ったマネットの造形はアメリカやイタリアでの監獄視察の産物だろう。投獄の謎は長きに渡って話を先導する。親族が犯した罪の意識に苛まれるダーネイ、劣等感から身を引くカートンには『リトル・ドリット』のアーサーと重なるものがある。彼らの悲痛な沈黙が支配し、著者にしては珍しくユーモアが少ないのも本作の特徴。言葉に出来ない極限心理を表現する仕草や視線にレトリックを凝らす技巧はまさに文豪。2017/11/21
ykmmr (^_^)
109
『フランス革命』を主題に、革命のメッカであるパリと、海を渡ったロンドンの2カ所を舞台にした、「風刺的」作者の代表作。革命の象徴である『バスティーユ牢獄』からの脱出、一銀行員のマネーロンダ、パリの場末での奇妙な編み物、果てにはロンドンでは樽の崩壊により、人々は理性をなくし、スパイ話。その中に、貴族・家族同士・恋愛など様々な感情が結びつく、風刺的スパイス以上に、「重き」小説。国王夫妻をはじめとし、その後の『恐怖政治』も含め、沢山の人が断頭台送りとなったが、2022/08/14
藤月はな(灯れ松明の火)
96
以前、読友さんの感想で「ノーラン監督の『ダーク・ナイト』の参考になった」というのを拝見してから気になっていた本でした。訳者が『ウィンブルドン』でお馴染みの池央耿氏なので大変、読みやすいです。序文も『幻の女』や『復活』のようにインパクトがあるのも良い。アメリカ独立戦争の余波でスパイにヒステリックになるイギリスと特権を貪る貴族への憤懣が爆発寸前の革命前夜のフランス。やがて両者は一人の善良なる貴族によって絡み合う。マネット医師は何故、監禁され、証拠品を破壊するドファルジュ夫妻は何を隠しているのか?2017/08/08
セウテス
69
〔再読〕池央耿氏の翻訳は格調高く、表現豊かで読みやすい。物語は1775年マリー・アントワネットの時代、民衆の不満は爆発寸前までに高まっている。パリの描写から、緊張感が伝わってくる程だ。物語はフランス貴族であったダーネイが、イギリスに亡命し自分と双子の様に瓜二つのカートンと出会う。しかしカートンは才能が有るにも関わらず、自分の人生に虚無感を抱いている。ダーネイはイギリスへ渡る船で一緒だった医師のマネットと娘ルーシーとも再会。登場人物紹介と共に隠された事情が、あえて見える様に描いており、後半への伏線に思える。2017/12/23
syota
41
ディケンズは4作目だが、話のダイナミックさではこの作品が一番。特に、革命直前のフランスを舞台にした部分は、読んでいて思わず引き込まれてしまう。登場人物も、初めは素性不明でミステリアスだったり、読者を引き付ける仕掛けに事欠かない。「若草物語」にもこの作品が出てきて、昔から気にはなっていたけれど、こんな話だったんだ(^o^) ちなみにこの池央耿訳は、今年出たばかりのほっかほかの新刊。長く流布していた中野訳とくらべると、リズミカルで歯切れがよく読みやすいのが特徴で、会話部分の巧みさも特筆される。[G1000]2016/09/13