内容説明
美しい従姉アリサに心惹かれるジェローム。二人が相思相愛であることは周りも認めていたが、当のアリサの態度は煮え切らない。そんなとき、アリサの妹ジュリエットから衝撃的な事実を聞かされる…。本当の「愛」とは何か、時代を超えて強烈に問いかけるフランス文学の名作。
著者等紹介
ジッド,アンドレ[ジッド,アンドレ] [Gide,Andr´e]
1869‐1951。フランスの小説家。法学者の父と、富豪の娘である母との間に生まれる。大学には進学せずに文学に専念し、ヴァレリー、マラルメ、ワイルドらと友人となる。1947年、ノーベル文学賞受賞
中条省平[チュウジョウショウヘイ]
1954年生まれ。学習院大学教授。仏文学研究のほか、映画・文学・マンガ・ジャズ評論など多方面で活動
中条志穂[チュウジョウシホ]
1970年生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
107
清らかでありながら悲しみに満ちた恋愛小説でした。ジェロームとアリサは互いに相思相愛ながらも恋人関係に足を踏み入れなかったのは、アリサの崇高なまでの信仰心があったからでしょう。その象徴が彼女の掲げる十字架でした。ジェロームとアリサの中で愛のあり方への思いが違うことが悲恋へと誘われたように思えてなりません。純粋にアリサを愛するジェロームですが、アリサは愛を自分の信じるものに捧げたのです。信仰によって狭き門の向こうへと行ってしまったアリサ。愛することを問い続ける普及の名作ですね。2016/01/10
巨峰
80
前半の姉妹を巡る月九のようなラブロマンス的展開から、後半の世俗な愛と信仰を巡る問題まで。まぁ、前半からこの二人はわざわざいろいろ難しくしていて無理じゃないかと思いましたが・・・自然に、スムーズに・・・そういう風に結ばれるはずのものは、結ばれるものですよねえ。キリスト教も変な風に重度の信仰すると、新興宗教と変わらないなあ。この女性はきっと尼僧になればよかったと思うのです。2016/11/10
まさむ♪ね
53
こんなの無理!絶対耐えられない。好きな女性にこんな謎な態度をとられたりしたら、恋愛若葉マークなわたしは気が変になって、きっととんでもない事故を起こしてしまいます。ジェローム、あんた立派だわ。でも一番辛かったのはジュリエット。ラスト、彼女の言葉に胸が張り裂けそうになる。そして結局、一番我を通したのはアリサだろう。もし、ジェロームの心が妹に移っていたら、アリサは素直に譲ったろうか。否、きっとその時はどんな手段を使ってでも彼の心をつなぎ止めようとしたはずだ。彼女の崇高な美徳はジェロームの愛無しでは成立しえない。2015/04/08
Kajitt22
41
欲望を解放し、快楽に身をゆだねることのできる愛に対して、アリサとジェロームの愛は極北にある。会いたいのに会わない約束をする、話したいのに二人きりなるのを避ける、そして日記での圧倒的な愛の告白。我々はなぜこの物語に魅了されるのだろう。容易に入ることのできない狭き門への憧憬か、歳とともに少しづつ失くしてしまった何かへの惜別か。15歳くらいの時以来再読。その印象は変わらないような気がする。2016/11/11
ころこ
37
中世的なようにみえて、近代的なところが面白いと思います。「門」といえばカフカ『掟の門』が思い浮かびます。「掟の門」は内面の隠喩だと思います。他方で「狭き門」は恋愛を成就するにはより一層純化し、遠ざけなければならない。それが成就しないことによって、恋愛の純度が試される。恋愛とは核心の不可能性によって、可能性の射程が開かれているようにみえる。プロテスタンティズムがお金を呼び込むウェーバーの議論とは真逆の、恋愛に最も相応しくなればなるほど、ふたりにその成就は絶対にやってこない。そして、その機制は自分の中にある。2021/10/13