内容説明
完全な顕微鏡を完成させた素人学者が、覗いてみた水滴の中に完璧な美をもつ女性を見出す「ダイヤモンドのレンズ」。ロボット物の古典として評価の高い「不思議屋」。独創的な才能を発揮しポーの後継者と呼ばれるオブライエンの幻想、神秘、奇想に富む8作を収録した傑作短篇集。
著者等紹介
オブライエン,フィッツ=ジェイムズ[オブライエン,フィッツジェイムズ] [O’Brien,Fitz‐James]
1828‐1862。アイルランド生まれのアメリカの小説家。ダブリン大学で教育を受けた後、ロンドンに出るが、遊蕩三昧の生活で遺産を使い果たしてしまい、24歳でニューヨークに渡る。新聞・雑誌に小説や評論を寄稿しながら贅沢な生活を送っていたが、貧困に陥り、南北戦争勃発を機に北軍に入隊。ようやく赴いた前線で敵方の将校との決闘になり、その時に受けた傷がもとで34歳の若さで亡くなった
南條竹則[ナンジョウタケノリ]
東京生まれ。小説『酒仙』で第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaichiro
88
約150年くらい前に上梓された米国作家オブライエンの代表作「ダイヤモンドのレンズ」を含めた短編集。表題作は極めて妖美。顕微鏡の微細な世界に理想の女性アニミュラを見つけるがすぐに死んでしまう。「この世は美しく彩られた砂漠」の表現から、現世に幸福感を見出させない男の虚しさを感じる。顕微鏡の先にある世界はしをんさんの「愛なき世界」にも通じるテーマ。人間が住むサイズからはあまりにも小さい。すぐそこにあるミニチュア世界の住人と直接触れ合い、会話することはない。狂おしさとその心情の美しさの葛藤。文学っていいねぇ。2019/08/11
マエダ
64
ダイヤモンドのレンズ突出して面白い。今年ベスト10は間違いない。”私が傑出した科学者なのか、狂人なのか測りかねいる様子だった。彼は後の方の考えに傾いていたのだと思う。私はたぶん狂っていたのだろう。全て偉大な天才は彼が偉大である分野に狂している。”2018/11/13
KAZOO
52
以前、創元推理文庫の「金剛石のレンズ」を読んでいましたので内容的にはほとんど理解していました。ただこちらのほうが比較的読みやすい割にあまり恐怖感というものが薄れている様には感じました。「不思議屋」は、ロボットものとはいうものの怪奇小説の分野だと思いました。この分野が好きな人には様々な楽しみが潜んでいます。2015/05/14
巨峰
37
結構わかりやすくて面白かった。西洋の怪異物の短編はいまいちよくわからないって感想を持つことがこれまで多かったんだけど、この本はそんなことなかった。最後のがハッピーエンドでよかった。なんとなく無理やりっぽいが。2015/02/24
藤月はな(灯れ松明の火)
33
裏表紙でのあらすじ紹介で表題作がロボットものと称されていたが、絶対、違うと思う・・・・。逆に「ボヘミアン=流浪の民」という役割付で悪辣非道を行う三人組の描写にヨーロッパから見たボヘミアンへのレッテルの強さに落ち込みます。一方で「手品師ピョウ・ルー」の華麗なる大活躍とどんでん返しに胸が躍りました。2015/02/16