内容説明
サイコ・ホラーの元祖と呼ばれる、恐怖と戦慄に満ちた傑作「砂男」。芸術の圧倒的な力をそれゆえの悲劇を幻想的に綴った「クレスペル顧問官」。魔的な美女に魅入られ、鏡像を失う男を描く「大晦日の夜の冒険」。ホフマンの怪奇幻想作品の中でも代表作とされる傑作3篇。
著者等紹介
ホフマン,エルンスト・テオドール・アマデウス[ホフマン,エルンストテオドールアマデウス] [Hoffmann,Ernst Theodor Amadeus]
1776‐1822。ドイツの作家。ケーニヒスベルク生まれ。2歳のときに祖母にひきとられる。ケーニヒスベルク大学法科に入学後、もっぱら作曲や楽器演奏、絵画に励む。卒業後、司法官試補を経て陪席判事に任じられる。1804年、南プロイセン政庁参事官としてワルシャワ入りし、2年後、ナポレオン軍のワルシャワ侵攻のために失職。劇場音楽監督の職を求めてバンベルク劇場と契約。支配人補佐の地位を得た後、作曲家、演出家として活躍する。1814年『カロ風幻想作品集』を出版。46歳で、脊椎カリエスのため死去
大島かおり[オオシマカオリ]
1931年生まれ。東京女子大卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaichiro
97
サイコホラーの元祖ホフマンの短編3作^_^200年も前に書かれた作品が現代まで残り、読まれていること自体に驚愕!恐怖というより不安定な自然に対する畏怖の感情を心に映すとしたらこんな作品で味わうのは如何?と提案された様な感覚^_^夏の怪談話なら怖い話はいくらでもあるが、不安定感をストーリーの力を借りて表現した実験的な作品だから、日本がまだ江戸時代をのらりと過ごしている頃の作品が、不思議な魔力を纏いながら今でも世に存在しているのではないか^_^長い時代を越えても消えない作品には特別な力を感じます^_^2019/08/07
藤月はな(灯れ松明の火)
86
「日本の夏は、やっぱり怪談 洋編」参加のため、再読。再読するとナサニエルのクララへの返信が傲慢過ぎて読みながら、気分が悪くなってくる。後、オランピアに惚れたきっかけもその美貌と自分のいう事に全て、「ええ!」というだけという部分とか、節穴過ぎて絶句。もし、ナサニエルがクララと結婚していたらモラハラ夫になっていた可能性が高いな、こりゃ・・・。そしてオランピアが連れ去られるシーンは映画『ファウスト』(ヤン・シュヴァンクマイエル監督)のぞんざいに扱われる人形シーンを連想してしまった。2020/08/16
パトラッシュ
75
モダンホラーのように血や臓物をぶちまけるのではなく、足音も立てず背後に忍び寄って凍りつかせる怪奇幻想文学が好きだ。特に恋愛や復讐、怒りに欲望などの妄執をテーマとする19世紀の諸作品は、どんな人にもある心の弱さを突くところが怖ろしい。誰もが持つ「気になってたまらない」部分につけ込んで身動きできなくさせ、破滅へと突き進ませるのだ。ホフマン作品はその典型であり、自分もコッペリウスやアントーニエに取り憑かれるのではと恐怖してしまう。人が自分の見たいものを見て、信じたいものを信じる限りホフマンは読まれ続けるだろう。2020/10/18
コットン
75
『砂男』:主人公のナターナエルが幼少から恐怖感をもつ砂男が現実味を帯びながらも一種幻想でもある物語 『クレスペル顧問官』:冒頭、クレスペルの設計図もなくちょっと変わった家の建て方が面白い。そして全ての人を虜にする美声を持つクレスペルの娘のファムファタル的求心力が凄い。著者のホフマンの職業遍歴は判事、作曲家、演出家、作家と多岐にわたり、そういった経験も作品に投影されているのだろう。2019/03/28
HANA
69
「砂男」「クレスペル顧問官」「大晦日の夜の冒険」の三篇を収録。「砂男」はもはや何度読み返したかわからない傑作。民話に出てくる砂男伝承から目玉に自動人形まであらゆるギミックが重なり合ってこの上なく「不気味なもの」を作り出している事を再確認。「クレスペル顧問官」「大晦日の夜の冒険」は初読だが、命を奪う芸術とファム・ファタルというモチーフがまさにロマン主義の作家ホフマンの面目躍如だなと。最後の作品だが、「ドリアン・グレイの肖像」や「プラーグの大学生」と共通するものを感じるけど、西洋にはこういう話多いのかな。2020/09/16