内容説明
モスクワでの無気力な生活に疲れた青年貴族オレーニンは、チェチェン人と対峙するコーカサス辺境での軍隊勤務を志願する。その地はコサックの自由な精神に溢れていた。そして美しい少女マリヤーナとの恋が彼の内面を変えてゆく。トルストイの従来のイメージを一新する輝かしき青春小説。
著者等紹介
トルストイ,レフ・ニコラエヴィチ[トルストイ,レフニコラエヴィチ][Толстой,Л.Н.]
1828‐1910。ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会破門の措置は、今に至るまで取り消されていない
乗松亨平[ノリマツキョウヘイ]
1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科助教。ロシア文学・思想専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
61
コーカサス(露語グルジア、英語カフカス)が舞台、若き青年貴族オレーニンの軍隊勤務の一コマが描かれる。いくばくはトルストイ自身をなぞる展開。後、物語作家として大成していく前段階・・従軍記ともいえるし、青春期として出来上がっている。筆者の実像は農民の妻とのただれた関係を続け、借金トラブルに嵌まっていた。18C中期より露はもとより欧州がコーカサス地方に向ける視線は熱かった。作品でもコサックの生活ぶりやチェチェン(英語タタール)人との争いが描かれていて興味深い。ナイチンゲールが登場するクリミア戦争から始まり→2024/11/26
巨峰
51
今も昔もコーカサスはチェチェン人との紛争が止まないロシアにとっては難しい地方なのですが、主人公の彼にとっては魅力に溢れるみずみずしい土地のようです。この小説はロシアの辺境を舞台にした優れた青春小説なのです。そして、自然や風土の描写が本当に素晴らしくて、コーカサスを旅した気持ちになれます^^2012/03/26
ころこ
44
オレ―ニンは作者との類似があるらしい。調べられるところに本作の経緯は載っていないので、解説の存在が貴重だった。チェチェンとは敵対関係だが、コサックだってオレ―ニンからすると他者だろう。過度な賞賛と気前の良さは蔑視と紙一重だ。お気楽なトルストイの人物像も興味深い。時代が違い、価値観が違うとはいえやはり驚く。自然はオレ―ニンの内面の投影だが、コサックたちにとっては風景ではなく風土である。見下していた女をモノにしようとして、相手に見透かされてピシャっとやり込められる。黙示の支配、非支配の関係が男女関係に重なる。2023/09/18
翔亀
43
若きトルストイの知られざる傑作、と帯にある。「戦争と平和」(以下「S」)の執筆直前に発表されたというが、正直、知られざる傑作という謳い文句によくあるように、その完成度は「S」に遠く及ばないようにみえる。逆に言えば、「S」にトルストイがいかに心血を注ぎ大いなる飛躍を遂げたのだ、と。◇「S」には多くの傑出した点があった。その一つが<自然>。この一点に本作は集中する。コーカサス地方(今のチェチェン)の雄大な雪山に囲まれた森林に、モスクワの腐敗した貴族社会から脱出した若き主人公オレーニンは生の再生を見出す。↓2016/03/02
マエダ
42
ちょっと読めなかった。相性が悪い。2019/07/24