内容説明
ヨークシャの荒野に立つ屋敷“嵐が丘”。その主人が連れ帰ったヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに恋をする。しかしキャサリンは隣家の息子と結婚、ヒースクリフは失意のなか失踪する。数年後、彼は莫大な財産を手に戻ってきた。自分を虐げた者への復讐の念に燃えて…。
著者等紹介
ブロンテ,エミリー[ブロンテ,エミリー][Bront¨e,Emily]
1818‐1848。イギリスの小説家、詩人。「ブロンテ三姉妹」の2番目(姉シャーロット、妹アン)。ヨークシャの牧師の家に四女として生まれる。1820年、一家はハワースの牧師館に移り住むが、翌年、母を亡くす。’42年、姉シャーロットとともにブリュッセルに留学。’46年、三姉妹合作で『カラー、エリス、アクトン・ベルの詩集』を自費出版するが成功しなかった。’47年、アンの『アグネス・グレイ』て同時期に『嵐が丘』を出版するが、厳しい評価を受ける
小野寺健[オノデラタケシ]
1931年生まれ。英文学者、翻訳家、横浜市立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
154
家族や隣人への愛が感じられない。まったくひどい話。面白くないのではない。リーダビリティは凄く高いと思う。ただ、登場人物たちがみな、ヤサグレ、荒れていて、互いに傷つけあうことに気が滅入る。富については失う者も得る者もいるが、幸せは一体誰が得たというのだろう。入り込んだあの男は、悪魔なのかもしれない。まず、復讐をする権利などないと思うのだ…。そして、ネリーのような女をなぜ置いておくのだろう。思いやりのある乳母さえいればこんなことにはならなかったのに。設定がとても稚拙で作者のご都合と思えて仕方ない。2017/10/15
アナーキー靴下
79
20代の頃、別出版社版で読んだが、登場人物が罵り合うばかり、情景も真意も掴めない話に心底疲れた記憶がある。今回新訳で再読したが、訳のおかげは勿論、朧気ながら筋書きが頭にあるためか、非常に読みやすく、心に強く触れる物語だったとわかり驚く。語り手は人間嫌いのロックウッドと使用人のネリー。善悪も好き嫌いも強いフィルターがかかっている。特にネリーにとっては、世話のかからない人間程好もしく、その評価は対等な関係においてはまったくそぐわないだろう。人を惹きつけるのは上っ面ではなく、奥にある、時にどろどろとした何かだ。2023/08/16
molysk
71
強風吹きすさぶヨークシャーの荒野、「嵐が丘」。アーンショウ家の屋敷に、孤児ヒースクリフが連れられてくる。ヒースクリフと屋敷の娘キャサリンは想い合うが、キャサリンはリントン家に嫁ぐ。数年後、財産を手にしたヒースクリフは、再びこの地を訪れるが――。ヒースクリフの仮借なき復讐は、いまだ恋焦がれるキャサリンへの愛情の裏返しなのか。姉シャーロットの著した「ジェイン・エア」は、過酷な運命を乗り越える主人公の心には、神の助けがあった。妹エミリーの本作で印象的なのは、自らのみを信じて、ひたすら破滅へと突き進む主人公の姿。2021/07/31
巨峰
39
高名な「嵐が丘」をはじめて読みました。激しい風雨、暗い空、重い雲、色のない草原そんなイメージで読みました。 しかし、ここまで、狂気に満ち満ちた小説はこれまでに読んだ記憶がないです。 立派な人物など誰一人登場しない。理性も知性も感じない。激情と感情。暗い人間性。 性善説なんて、この小説の前では、どんだけ奇麗事なんだろうと思ってしまいます。 特に前半はあまりにもえぐい展開です。その暗さには少しだけ心惹かれますが。2010/03/15
ころこ
38
一族の生き残りはヒースクリフとヒンドリーとキャサリンの子供の3人である。人質なのか、虐待で精神的に支配されているのか、精神疾患なのか良く分からない。なぜ最初の3人から現在の3人になったのか。この間に何が起こったのか。そもそもヒースクリフがなぜ一族に入って来たのか、明確な理由は語られていない。彼は一族に憎悪と暴力をもたらす。他方で一族の中心にキャサリンとの愛がある。存命の2人がヒンドリーとキャサリンの身代わりなのは想像が付く。このままだと近親婚で、人間関係の距離の近さの一方で実際のコミュニケーションは上手く2023/09/19