内容説明
ユーモア、犯罪、皮肉な結末。アメリカの原風景とも呼べるかつての南部から、開拓期の荒々しさが残る西部、そして大都会ニューヨークへ―さまざまに物語の舞台を移しながら描かれた多彩な作品群。20世紀初頭、アメリカ大衆社会が勃興し、急激な変化を遂げていく姿を活写した、短編傑作選。O・ヘンリーの意外かつ豊かな世界が新訳でよみがえる。
著者等紹介
ヘンリー,O.[ヘンリー,O.][Henry,O.]
1862‐1910。アメリカの小説家。ノースカロライナに生まれ、テキサスで創作を始める。銀行勤務のかたわら週刊新聞を発行するが横領容疑で起訴され、中米ホンジュラスに逃亡する。帰国後、オハイオ州立刑務所に服役。出所した後はニューヨークに活動の拠点を移し、新聞・雑誌に多数の短編を発表して一躍人気作家に。没後、優れた英語の短編作品に与えられるO.ヘンリー賞が創設された
芹澤恵[セリザワメグミ]
成蹊大学文学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
126
短編を得意とする作家でほぼ同世代のサキと比較されるO・ヘンリー。サキが英国中上流階級悪意残酷笑いなら、ヘンリーは米国善意庶民ペーソス笑いと対照的印象だが、ヘンリーもサキに劣らず悪戯心、茶目っ気、皮肉があり、オチの付け方が巧み。私が一番好きな短編作家はサキで、次がチェーホフだが、ヘンリーも結構好みのタイプ。お涙頂戴作家ではなかった。巻頭作、「しみったれな恋人」が笑えた。芹澤恵さんは好きな翻訳家の一人。2023/11/13
文庫フリーク@灯れ松明の火
116
♪ほんの小さな 出来事に 愛は傷ついて~♪新潮文庫版短編集1・2で未読だった「サボテン」些細な虚栄心が招いた致命傷。プロポーズした麗しの女性が答えとして送ってきたのは、スペイン語の名称記す札を下げた見慣れぬサボテン一鉢。彼女が雪氷の如く冷淡になったのは、彼という人間を見極め、見限ったためでしょう。知ったかぶりは身を滅ぼす(自戒!)【洒落者ジム】の名に相応しい金庫破りのプロが魅せるダンディズム。「きみがつけてるその薔薇をもらえないか」キザなセリフも覚悟決めた証。再読でも惹かれる「甦った改心」超一流リゾート→2015/09/12
keroppi
85
【O・ヘンリー誕生日読書会’19】O・ヘンリーを読んだのは、いつ以来だろう。「最後の一葉」「賢者の贈り物」が、懐かしい。懐かしいと言いながら、今までちゃんと読んだことがあったのだろうか。このイベントに参加しなければ読み返すこともなかったかもしれない。読み返してみると、やはりいいものだ。人生の機微、ストーリー運びのうまさ、オチの切れ味。またしばらくして、他の作品も読んでみようかな。2019/09/18
おくちゃん☃️柳緑花紅
85
恥ずかしながら読んでいたのはこの33の短編の中で1ドルの価値/最後の一葉/賢者の贈り物の三編だけでした。軽妙洒脱、ハッとさせられるもの、そうきたかぁと唸るもの、ユーモラスなもの、皮肉なもの、ホロリとするもの、え!ッと驚くもの、「水車のある教会」は、先が読めたもののホロリと涙。とても楽しい読書時間だった。紹介してくれた彼に感謝。2016/07/17
こーた
80
軽妙洒脱。あるときは都会的でスタイリッシュに、あるときは西部劇のように埃っぽく。ページを繰れば、そこにはあたたかいユーモアに包まれた、古き良きハリウッド映画的世界が広がっている。チャップリンが、ジミー・ステュアートが、ジャック・レモンが、ヘップバーンが本の向こう側で微笑んでいるよう。オチは予想できてしまうけれど、それがかえって安心感を与えてもくれる。ベタは突き抜ければお手本になる。物語のお手本。それはずっと古びない。2017/07/10