内容説明
傷が癒え、再び前線へと戻るフレデリック。しかし戦況は厳しく、イタリア軍は敗走を余儀なくされる。フレデリックは戦線を離脱し、命がけでキャサリンのもとへ帰り着く。結婚を誓い、スイスへ脱出する二人。だが、戦場の中で燃え上がった愛の結末は、あまりにも悲劇的なものだった。
著者等紹介
ヘミングウェイ,アーネスト[ヘミングウェイ,アーネスト][Hemingway,Ernest]
1899‐1961。アメリカの小説家。行動派の作家で、第一次世界大戦に赤十字の一員として従軍し、負傷する。その後、特派員として再び渡欧。スペイン内乱や第二次世界大戦にも従軍記者として関わり、その経験を元に『武器よさらば』『誰がために鐘は鳴る』を書き上げる。第二次世界大戦後はキューバに渡り、1952年に発表した『老人と海』でピューリッツアー賞を受賞。1954年にはノーベル文学賞を受賞する。晩年は健康と精神状態が悪化し散弾銃で自殺
金原瑞人[カネハラミズヒト]
1954年生まれ。法政大学社会学部教授。翻訳のほか、エッセイ、評論など幅広く手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やきいも
99
フレデリックは戦線を離脱し、命がけでキャサリンのもとへ帰り着く。結婚を誓い、スイスへ脱出する二人だったが...。1929年に書かれた小説だけあって戦場の描写がとてもリアル。だからフレデリックの逃避行もとても迫力のある物となった。よけいな装飾をほどこさないシンプルなセリフや表現もむしろ説得力があった。また読みなおしたい。2017/01/30
優希
97
燃え上がった2人の恋はどうなっていくのか気になりながら読みました。傷が癒え、戦争の前線へと戻ったものの、敗走を余儀なくされたことから戦線を脱出し、恋人の元へと命がけで駆けつける姿は愛に生きる姿そのものでした。結婚を誓ったほどの愛の結末があまりにも悲しすぎます。距離が縮まり、結ばれると思った矢先の悲劇にはやるせない思いに駆られました。戦場下で燃え上がった恋の結末が喪失と孤独という切なさはありましたが、何処か美しさを感じるのが不思議です。2016/11/19
セウテス
91
〔再読〕やがて傷もいえ、戦場へ帰っていく主人公。しかしドイツとオーストリア合同軍の勢いは強く、敗戦の連続となる。敗走する軍から逃げ出し、キャサリンのもとへ帰ってきた主人公、結婚を誓いスイスへと脱出を試みるが。上巻での明るい恋愛に嫌な感じがしたのだが、悲劇は剰りにも何気無く訪れる。戦争は結局哀しみ以外何も生み出さない、という強い反戦意識なのだろうか。戦う為に兵士になったのだから、兵士を終えてから恋愛をすべきだった、又は恋愛するなら兵士を辞めるべきだったのか。「武器よさらば」とは、どう解釈すれば良いのか迷う。2018/07/26
扉のこちら側
85
初読。2015年1233冊め。【101-2/G1000】敗走する軍から離脱し、燃え上がる愛とともに逃げる二人の結末が悲しい。「雨が嫌い」という彼女との別れが雨の日になる、詩的な悲しさ。最後の一文がなんとも哀しく美しい。2015/12/23
molysk
73
後に「カポレットの大敗走」と呼ばれる大敗に巻き込まれたフレデリックは、イタリア軍を脱走してキャサリンの元へ向かう。もはや戦争は、二人の未来を阻むものでしかない。中立国スイスへと脱出して平穏の日々を過ごす二人は、将来の幸福を疑うことはなかった。しかし――。ヘミングウェイの文体は、簡潔で淡々とした短文が連続する、いわゆるハードボイルド。だがその文体は、感傷的で繊細な内面を隠すための、鎧のようにも思えてしまう。フレデリックは、悲しみを表に出すことはない。ただ、街に降る雨が、フレデリックを包んでいるだけだ。2022/06/26