内容説明
ゾシマの死に呆然とするアリョーシャ。しかし長老の遺体には、信じられない異変が起こる。いっぽう、第2巻で「消えて」いたミーチャは、そのころ自分の恥辱をそそぐための金策に走り回っていた。そして、ついに恐れていた事態が。父フョードルが殺された!犯人は誰なのか。
著者等紹介
ドストエフスキー,フョードル・ミハイロヴィチ[ドストエフスキー,フョードルミハイロヴィチ][Достоевский,Ф.М.]
1821‐1881。ロシア帝政末期の作家。60年の生涯のうちに、巨大な作品群を残した。キリストを理想としながら、神か革命かの根元的な問いに引き裂かれ、ついに生命そのものへの信仰に至る。日本を含む世界の文学に、空前絶後の影響を与えた
亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年生まれ。東京外国語大学教授。ドストエフスキー関連の研究のほか、ソ連・スターリン体制下の政治と芸術の関係をめぐる多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
272
大河小説と呼ばれるのは、ある一族の歴史であるとか、一国の興亡を描いたものだろうが、この『カラマーゾフの兄弟』は、それらに十分匹敵するスケールの小説でありながら、ここ第3部の終りまでには、たったの3日間しか経っていない。本書の亀山訳では、実に3巻、1500ページ近くを費やしているのにである。実に特異な小説というべきだろう。物語は、ここにきてドミートリーが一気に主役の座に躍り出る。しかも重大な嫌疑を受けて。4巻と5巻の一部を残すのみとなったが、終幕は全く闇の中だ。アリョーシャは、この事態にどう対処するのか。2013/04/13
パトラッシュ
172
粗暴で金銭感覚が狂っていて酒色に溺れながらプライドだけは高い。両津勘吉を悪化させたようなクズ全開のミーチャが父フョードルと女を取り合ったあげく、父殺しの容疑者となってしまう。破滅へ一直線の暴走ぶりが爽快なほど生き生きと描かれ、冒頭で恩師ゾシマ長老を失い悲しみにくれる弟アリョーシャなど忘れかけた。後半の取り調べシーンはラスコーリニコフとポルフィーリイの対決のような緊張感は皆無だが、父親が修道院での食事会をぶち壊した場面を連想させる。カラマーゾフの濃密な血の匂いにむせびそうなドラマが満載だった。(4巻に続く)2020/05/05
あきぽん
157
世間には「家族は仲がいいもの」という建前があるけど、殺人事件の多くは家族間であると事実があり、家族であるが故に距離がとれず憎しみが限りなく増幅することも多い。きょうだい間の憎悪を端的にあらわしたのが旧約聖書の「カインとアベル」なら、親子間の憎悪ならこの「カラマーゾフの兄弟」だろう。悩んでいるのは、自分だけではないのだ。2022/05/05
ケイ
140
いよいよ起こる事件。2日目の夜から3日目。心の汚れた人達が多すぎる。グルーシェンカ、その親戚でアリョーシャとは知り合いの神学生のラキーソン。そして、お金の臭いを嗅ごうとする輩など。読むのが苦しくなった。詐欺師とは、よく語るものだなあ、恥ずかしげもなく色んなことを…。そしてまた、民とは、分かりやすく饒舌に語られることが好きなのだということを、小説はきちんと見せてくれる。2021/06/09
Kajitt22
129
誰もが身に覚えのある嫉妬の感情。長男ドミートリーのそれは、性格の激しさと相まってその振れ幅が大きく、極端に自分を追い込んでいく。疾走感を持ったドストエフスキーの筆致は素晴らしく、一気に事件へと突入してしまう。虚と実を一つ一つ明らかにしていく深夜から夜明けの「予審」はカルロス・ゴーンを想起させるまさに現代のミステリーようだ。登場人物は皆一筋縄ではいかない。再読なのに手に汗を握るような読書だった。2019/02/26