内容説明
「おれに任せてくれ。」―漠とした無計算な一言から始まった八年間の秘密の関係が露見した。愛人は失踪し、半狂乱の妻の憎悪は、残された三人の子供に向けられる。追いつめられて、我が子を、その手にかけようとする父親の恐ろしくも哀れな姿を、迫真の筆致で描いた「鬼畜」。ほかに、生きる望みを失った旗本の恐怖譚「甲府在番」など、凄惨な人生の実相に迫った傑作七編。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。給仕、印刷工などの職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で、芥川賞を受賞。’58年に刊行された『点と線』は、推理小説界に「社会派」の新風を呼び、空前の松本清張ブームを招来した。ミステリーから、歴史時代小説、そして、古代史、近現代史の論考など、その旺盛な執筆活動は多岐にわたり、生涯を第一線の作家として送った。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Aya Murakami
65
アマゾン購入本。 タイトル通り全体的に鬼畜登場人物多め。あ…、松本清張作品ってそもそもそういう作品だったか…。 点はもちろん線のないただの点。今も実在する某大物野党に潜入して内部の女性を食い物にした挙句情報を吐かせる、我が子を使いパシリにする、詐欺泥棒をする文字通り鬼畜な男が警察の暴露ネタをもって主人公のもとに現れる。さて、男の言うことは真実か?警察に使いつぶされて鬼畜になったのか元から鬼畜だったのか?暴露ネタも含めて真偽不明。ある程度事実も含むのだろうが。2024/09/05
国士舘大学そっくりおじさん・寺
54
松本清張の短編集のすごいところは、いわゆる、世間一般で言うところ(24時間テレビ的な)の「感動」が無いところだ。1冊読むと、この世は神も仏も無いのだなとすら思わされる。それもある意味感動なのである。こんな良いことが無い松本清張の世界に比べれば、現実はまだ優しいのかも知れない。現代ものの外に、歴史時代小説も混じっているが、武士なんて何にもカッコ良くない。武人をカッコいいと思うのは、もう終わりにしたいものだ。みんな、自分を取り巻く世界の型に当て嵌めてしまうと、簡単に出られなくなってしまう。みんな平気で不自由。2024/08/06
KAZOO
36
やはり若いころにかなりな苦労をしているからでしょうか?清張という人は本当に人間の奥底に隠れている怨念などを題材にして傑作をものにしていると思います。特に「鬼畜」は昔から何度も読んでいるのですが、人間のどうしようもなさを描ききっていると思いました。やはり社会派ミステリーの大家ですよね。2014/11/29
とろとろ
23
ライフワークのごとく読む。清張短編全集その7巻目である。帯には「凄惨にして哀切」とある。7編の短編の中で、やはり「甲府勤番」と「鬼畜」が光った。「鬼畜」は後にある清張自身の解説で実際にあった話だということである。まさに帯にあるとおり恐ろしいほど陰惨な話だった。2015/09/08
ユウユウ
14
だいぶ前に読んでいたようで、ほぼ初読。 表題作「鬼畜」読了。2022/08/24