内容説明
「牛首島」の不思議な建造物・ダイダロス館に集ったのは、ナディア・モガールと矢吹駆を含む十人の男女だった。島を襲った嵐のため、孤立化する島の中で死体が発見される。その死体に施された装飾の意味は?謎が謎を呼ぶ中、次々と殺されていく訪問客…。はたして彼らがここを訪れた真の意味とは!?一六〇〇枚に及ぶ記念碑的探偵小説。
著者等紹介
笠井潔[カサイキヨシ]
1948年東京生まれ。’79年、矢吹駆シリーズの第1作『バイバイ、エンジェル』でデビュー、第6回角川小説賞を受賞。大河伝奇小説『ヴァンパイヤー戦争』が大ヒットする一方、評論活動でも注目を集める。2003年、『オイディプス症候群』と『探偵小説論序説』が第3回本格ミステリ大賞に選ばれ、小説部門と評論部門のダブル受賞となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yucchi
34
孤島で起きる連続殺人。緊迫した場面で次にどうなるの?と思っている所で始まる薀蓄大会...。殺されるかもしれない状況の中、よく呑気にそんな話してられるなーと変な所で感心する私。薀蓄部分も解決に絡んでくるのだがもう少し簡潔にして欲しかった。駆の存在がかなり空気なのだが解決時は饒舌(笑) 今後の駆とイリイチの対決も気になるところだ。長いけどそれに見合う読了感。2015/08/15
ndj.
11
道具立ては非常に面白いのだけれど。相変わらず、哲学談義は唐突にすぎるし、本筋の事件とさほどかかわりがあるようには思えず。エンタテインメントとしてうまく消化されているとはいいがたい。が、フーコーが出てきちゃうよ!的な物珍しさについほだされてしまうのだな。…『そして誰もいなくなった』を読みなおそう。2018/01/06
ネムル
9
なるほど。後半から矢吹駆の出番が急速に減ったと思ったら、『十角館の殺人』への15年からの応答か!とリアルタイムで読んだひとは驚いたんだろうね。大長編化に伴って、話の焦点を一点に定めないミステリの冒険に転じたかと思えど、蘊蓄と枝葉が多すぎて、その試みが上手くいってるのかどうかもやもや。ついでに、フーコーの出番の多さに笑うが、その思想対決もだいぶすれ違い気味のような。2023/06/01
ホームズ
8
ギリシア神話に関する話が面白かった(笑)結構難しかったけど(笑)上巻はちょっと展開が遅かった感じでしたが下巻に入ってからはいい感じで物語が進んでくれて良かった(笑)イリイチの徐々に姿が徐々に見えてきた感じが面白いですね(笑)10部作予定らしいですが5作目、後2作雑誌連載が終わっているらしいから続きでるかな~。2011/05/21
マヌヌ2号
4
ミステリとしての作品構造が最高クラスに美しいのでまんぞくです。ギリシャ神話の見立てやフーコーの思想、HIV(オイディプス症候群)といったモチーフが孤島の館において複雑怪奇に絡まり合い、どこがどう繋がるのかすら見当もつかない巨大な謎を作り上げる。そしてその混沌が、現象学を支点とした矢吹駆の推理によって整頓され、秩序だった真の姿を現す。技法自体は過去のシリーズと多くは変わらないはずなのに、この化物じみた迫力はなんだろう。やはりおれはちゃんと過去作を読めていなかったのではないか。圧巻の傑作。素晴らしかったです2020/09/27