内容説明
八人を惨殺した残酷非道な殺人鬼が、判決を聞き、恐怖のあまり言葉を失った。死刑よりも遙かに重い刑罰「カンタン刑」とは?(表題作)念じた物を石に変える能力を持つ男が、邪悪な欲望を次々と遂げてゆく…(「おれの人形」)。複数の筆名で多彩な仕事を残した異才による、悪夢のような十二篇と、幻の劇画原作作品(上村一夫画)を収録。
著者等紹介
式貴士[シキタカシ]
1933年、東京都生まれ。本名・清水聰。千葉大学文理学部英文科卒業後、早稲田大学大学院に編入。’58年、同大学院文学研究科(英文学専攻)修士課程修了。修了間際に創設された、ワセダミステリクラブ中心メンバーのひとりである。間羊太郎名でミステリ評論や児童向け読み物、小早川博名で雑学やジョーク収集、ウラヌス星風名で西洋占星術研究、蘭光生名で官能小説など、幾つもの筆名を用いて様々な分野で活躍。’77年、SF作家・式貴士としてデビュー。他に類のないユニークな作風で、熱烈なファンを獲得した。’91年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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梅ちゃん
20
2020.02.21初読みの作家さん。かなり以前に書かれた作品を『怪奇小説コレクション』としてまとめられている。どの作品もかなりグロテスク。よくこれだけ想像をして書けるものだと感心。表題の『カンタン刑』、死刑より恐ろしいその刑罰の中身はなんとおぞましいものか。私には表題作だけでなくその他の作品も面白かった。昔、気に入って読んでた読んだ筒井康隆先生の短編集と感じが似ているような気がした。たしかに万人受けはしないだろうけど、引きつけられました。2020/02/21
501
19
角川からでている同名の著書とは表題作を除き重複はない。角川のに比べエログロ、背徳感、生理的嫌悪満載の短編集。読みながら不快感を感じつつも引き込まれていく。読後もその不快感がべっとり脳裏にくっついているのを感じながらも次の話を読みたくなる。なんか癖になりそう。2015/01/07
かみしの
9
エロ・グロまみれの時々センチメンタルなSF短編集。「カンタン刑」は某世にも奇妙な物語を彷彿とさせながら、より気持ち悪く仕上がっている。虫が嫌いな人と猫が好きな人は要注意。「首吊り三味線」もまたえぐいお話し。「マイ・アドニス」「鉄輪の舞」は短いながらも怪奇的なオチのきいた傑作。心をえぐるものばかりかと思いきや、「血の海」「東城線見聞録」のようなギャグを基にした幻想的なものもあり、「アイス・ベイビー」のようなSFもあり、大満足の短編集だった。江戸川乱歩×平山夢明×藤子・F・不二雄といった感じ。2016/11/18
vaudou
8
初式貴士。玉石混交の短編集だが、「カンタン刑」「首吊り三味線」あたりの専門的知識とディテールで圧倒させる骨太な作品はやっぱり凄い。時代性も鑑みれば、エログロやナンセンスをSFの世界と掛け合わせた作風をこそ特筆すべきだが、書いてる途中で抑制が効かなくなったかのような「渇いた子宮」「おれの人形」などの官能小説家としての筆致になぜか惹かれたりする。作家前の身の上話から、式作品と出会うまでを真摯に綴る、平山さんの解説も素晴らしかった。2014/04/04
すけきよ
8
誤解を恐れずに言うならば、女性の人格を無視し、人形以下の便利な性欲処理器具に変形させてしまうのが、鬼畜好きをひどくくすぐる。……やっぱ、誤解しないで。エロ・グロが単なるおまけでなくて、物語と不可分になっているのがひじょうに魅力。お気に入りは、「カンタン刑」「首吊り三味線」「ヘッド・ワイフ」「おれの人形」「血の海」「鉄輪の舞」「東城線見聞録」2009/09/19