内容説明
遠別―北海道の最北端を日本海側に下った小さな町。風は強く、日本とは思えないほど冬の寒さは厳しい。それでも季節はめぐり夏には水もきらめく。その地で、豊かな生命の営みを全身で感じていた少年。長じて装丁家になったその少年は、北の自然に溶けこんだ大切な思い出を、みずみずしい文章で絵画のように描き出した。懐かしさが芳醇に匂いたつ傑作短編集。
著者等紹介
坂川栄治[サカガワエイジ]
1952年北海道遠別町生まれ。装丁家、文章家、写真家。書籍の装丁を手がける一方、広告・映画・空間デザインなどの幅広いアート・ディレクションを行う。’92年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
117
物語というよりは、コラムというか、お堅い感じのエッセイというか、自叙伝的なお話ですね。生まれ育った遠別町を舞台にした話なんですが、どのストーリーも、情景や温かさ、あるいは温もり、時には儚さ、悲惨さ厳しさみたいものが浮かびあがり、時代こそ違いますが、つい自分の幼少時代と照らし合わせちゃいました。『THE昭和』的な作品で、面白く読めました(^^)余談ですが、この本を読んだことを踏まえて、何度も行ってるけど、改めて遠別町の街を見回って、遠別町にある旭温泉で、温泉に入りながら黄昏れてみたいですね(^^;)2017/07/27
新地学@児童書病発動中
105
北海道遠別の少年時代を描く13の物語。作者はプロの作家ではないので(本業は写真家、装丁家)、文章やプロットには、ややぎこちないところがある。それでも、この本は多くの人を惹きつける内容を持っていると思う。ネットもスマートフォンもない、慎ましい昭和の生活の情景が鮮やかに伝わってくるのだ。1話の「白い煙」で、寝ているうちに蒲団に雪が積もっていたという描写に驚いた。遠別はそれほど雪の多い地域のようだ。「山おっちゃん」が私のベスト。耳の聞こえない親戚のおじさんの武骨な愛情が心に沁みた。2017/04/29
Tadashi Tanohata
22
札幌から北見への車中で、臨場感をあじわいたく選ぶ。ノスタルジックなほのぼのした内容を想像するも、豈図らんや、北国の苛酷さ、戦争の悲惨さ、思春期の儚さなど刺激的な短編集でした。遠別わかりますか。稚内の近くのとてもとても寒いところです。とてもです。2015/09/01
陽
21
北海道最北端の生活って、すごく辛いと聞いた。 マイナス20度の時もあるそうで、人が生活する場所じゃないって、学校卒業すると同時に本州に越してきた人がいた。 辛いから、助け合って、でも、人を踏み台にして、とか、本音で生きているようにも思える物語だ。 俺は寒いの嫌い、雪なんて、一生観たくないのが本音、北海道に行くなんてとんでもない。2018/11/19
小太郎
11
遠別は昔行ったことあるけれど、何にもない広々とした海岸を思い出しました。北海道の中でもかなり異国情緒があるところでその雰囲気が出ていました。海外の短編読んでるような気になります。2017/02/25