内容説明
「猫の蚤とりになって無様に暮らせ!」―主君の逆鱗に触れた長岡藩士・小林寛之進は、淫売夫に身を落とす。唾棄すべき下賎な商売だと考えていたが、次第に世に有用で、むしろ崇高な仕事だと確信する。ところが、政権が変わり蚤とり稼業が禁止となった。禁令の撤廃に出向いた寛之進は、捕らえられ刑場に送られるが…。(表題作)江戸に生きた愛すべき男たち。全六篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
102
猫の蚤とり方法、犬の毛皮を火鉢で温め、そっと猫にかぶせる。蚤は温かい方に移動する。毛皮を火鉢の上で掃えば蚤はプスプス焼け死ぬ。が、蚤とり本来の家業は女性を悦ばせること。つまり男娼。城主の詠んだ句を良寛のパクリだと言い放った寛之進は藩を追放に。その際、城主の言葉を真に受け蚤とり家業に。親方夫婦の教えと、もとから頭脳明晰だった彼は超絶テクニックを尽くし武家言葉も受け、客からの引きが絶えない売れっ子になる。江戸時代の多彩な職業に興味がわき、そして政権交代で、ある日突然職を失う理不尽に怒りもわく。おもしろかった。2018/06/11
かんらんしゃ🎡
51
犬も猫もノミとりの時は喜んで腹を見せる。今は首輪とか一滴除去とかだから、親指の爪でノミを潰すなんてことはなくなったな。あれはあれでコツが要ったものだ。つまりこれはグルーミングで愛情表現なんだから、本作で女性を悦ばすのもこれはあながち商売違いとは言えない。2018/05/26
みさどん
21
蚤取り侍はすごく短いので、映画化の際には好きにつくることができるのがいいのだろう。名前通りの仕事ではなく男娼なんだもの。こんな生業か実際にあったというのがおもしろい。弱味につけこまれたり、人情ものがあったり、心が揺さぶられた。いい人がバカをみる話は悔しくてたまらない。2018/04/13
剛腕伝説
18
「帰省」で藤沢周平が絶賛していた小松重男の初読み。本当は「ずっこけ侍」から読み始めたかったが、図書館になかったのでまずはこちらから。 主君の逆鱗に触れ、蚤取り(実は男娼)に身を落とした「蚤とり侍」、商家の婿に入り一物にうどん粉を塗される「唐傘一本」、無償で町人の子に読み書きを教える極貧の浪人「代金百枚」、他六篇の短編集。 流石、藤沢周平が絶賛するだけの事はある。 テンポが良く、展開が鮮やか。面白過ぎて一気に読んでしまった。そうか、「唐傘一本」の清兵衛が近藤姓を名乗ったのはそういう落ちかぁ!笑ってしまった。2021/07/15
ホシナーたかはし
18
映画後に読みました。江戸時代、今では考えられない職業が跋扈する中、猫の蚤とりて仕事もあったのですね。しかも裏稼業w本題の他に五作入っており、私のお気に入りは一世一代。高校生の時分、エロ小説やエロビデオをどうにかして読もう観ようとしたのを思い出します。短編集の最後に全く救いの無い「年季奉公」をもってくるのは読了後の気分が落ちます。ちなみに映画版は本題・唐傘一本・代金百枚を上手く融合させたもの。2018/05/28
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- 和書
- 閉ざされた扉の向こうで