内容説明
短編推理の名手、石沢英太郎が逝った。本書は、著者が刊行を楽しみにしていた満州小説集である。旧満州(中国東北部)の大連に育った著者は、そこで敗戦を迎えた。「つるばあ」「国旗」など、青春と激動のときを過ごしたかの地に、限りない哀惜の念をこめて描いた傑作集。巻末に、親しかった作家・友人たち21人の追悼文を付ける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マヌヌ2号
4
やはり石沢英太郎の短篇は良い。読んでいる途中もうまいなーと思うのだけれど、読み終えたあとのしみじみと沁みる余韻が堪らない。必ずしも爽やかな余韻ではなく、むしろ苦みや遣り切れなさを伴う作品が多いのだけれど、その苦みが静かな感傷を胸に残す。特に「つるばあ」は貫禄の傑作。この短篇の美徳は、自らのルーツに悩み、孤独感に引き裂かれる人間の心の揺れ方を丹念に描き出した点にこそあると思う。人間と彼らの来歴・故郷との関係性こそがこの短篇集を貫く脊柱なのだと、読んでいてつくづく感じた。例えば「国旗」とかに顕著ですけどね2019/11/02
kanamori
0
☆☆★2011/10/08