出版社内容情報
ドラマ「相棒」などの脚本家としても活躍し、『未明の砦』で大藪春彦賞を受賞。骨太の社会派サスペンスの書き手として独自の存在感を発揮する太田愛のもう一つの顔。日本推理作家協会賞候補となった「夏を刈る」、半自伝的小説「給水塔」を含む待望の第一短編集。
【目次】
内容説明
社会派サスペンスの旗手、もうひとつの顔―。初の半自伝的小説「給水塔」を含む五編を収めた、著者の第一短編集。
著者等紹介
太田愛[オオタアイ]
香川県生。1997年、「ウルトラマンティガ」で脚本家デビュー。一般ドラマからアニメーションまで幅広く執筆。特に「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマで高い評価を得ている。2012年『犯罪者 クリミナル』(後に『犯罪者』に改題)で小説家デビュー。’13年『幻夏』で第67回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)にノミネート。’20年『彼らは世界にはなればなれに立っている』で第4回山中賞受賞。’23年『未明の砦』で第26回大藪春彦賞受賞。’24年本書に収録の「夏を刈る」で第77回日本推理作家協会賞(短編部門)のノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
138
ちょっと何言ってるのかわからない・・この表題。だけど魅かれてしまうのは何故?久しぶりの太田さんは5話の短編とエッセイ。1話目〈十月の子供たち〉読み始めるとすぐに状況が分かる。そして、辛い。2話目の〈サイレン〉切ない読後感。ガツンと映像が浮かびゾクゾクした〈夏を刈る〉そうかこの短編集は喪失なんだなと一人ごちる。〈鯉〉これもまた堪らなく好みだ。〈給水塔〉と最後のエッセイを読み、そう言えば私の遥か子供の頃、ハッキリ言葉にできない〈何か〉感じた時期を思い出した。大人になったら感じる事も無くなってそれもまた喪失かー2025/08/03
ちょろこ
109
根っこの一冊。どんな設定でも太田さんの伝えたい、ぶれない根っこを感じる静かに紡がれたこの短編集がすごく好き。一話目の「十月の子供たち」はページを捲るたびに心がざわざわし、重なりゆく現実世界にせつなさが。真実を隠し守る想いの尊さに涙し、"今もこの世界にいる"という言葉に心がぎゅっと締め付けられた。短編にでさえもさりげなく盛り込まれた問題提起を目にするたびに何度ため息をついたことか。過去の景色を手繰り寄せていくせつなさと温かさ、その景色が一変する怖さの描き方も巧みな太田さんの筆致にひたすら感服、至福のひと時。2025/08/16
みかん🍊
86
タイトルが素敵で手に取ったが、途中で作者名を確認した、5編の短編とエッセイだが装丁のごとく不穏な感じで社会派小説、ミステリーのイメージだった太田さんと感じが違がう、「十月の子供たち」は正に今戦禍の中暮らしている家族のリアルなのかもしれない、場所も時間も曖昧で捕らえどころがない不安で曖昧な世界観だった。2025/07/25
道楽モン
83
太田愛の新刊は短編集だった。前作『未明の砦』で作家として大きく飛躍した感があるが、本作で単行本未収録作品はすべて出尽くした。ある意味で修行時代を終えたのかもしれない。長編を得意とする作風の彼女が、短編を如何に料理するのかというお手並み拝見的態度(←偉そうだなぁ)で読んでみたのだが、やはりどこか無理している感じは否めない。既成の枠にハメようと苦心しているようで、不自由さが隠しきれていない。純文学的な流れでも良いのになぁ。私がブレイクを待ちわびている最右翼の作家。渾身のジャンプを楽しみに待っているのだ。2025/07/07
ででんでん
79
最初の「十月の子供たち」で、有無を言わせず物語の中に引っ張り込まれる。続く4篇も、それぞれに全く異なる世界に吸い込まれ、出てきては、また吸い込まれる。「夏を刈る」や「鯉」には、大好きな太田さんの長編たちにも見られるような、入り組んだ構造がある。最後の「給水塔」では、子ども時代の、死と隣り合わせの、夏の手触りと、その喪失(成長というのか)がくっきりと浮かび上がってくる。豪奢な短編たちだが、読むほどにまた彼女の長編が読みたくなる。長編の連載が始まっているとの情報を知ることができて嬉しい。2025/08/04