出版社内容情報
ドラマ「相棒」などの脚本家としても活躍し、『未明の砦』で大藪春彦賞を受賞。骨太の社会派サスペンスの書き手として独自の存在感を発揮する太田愛のもう一つの顔。日本推理作家協会賞候補となった「夏を刈る」、半自伝的小説「給水塔」を含む待望の第一短編集。
【目次】
内容説明
社会派サスペンスの旗手、もうひとつの顔―。初の半自伝的小説「給水塔」を含む五編を収めた、著者の第一短編集。
著者等紹介
太田愛[オオタアイ]
香川県生。1997年、「ウルトラマンティガ」で脚本家デビュー。一般ドラマからアニメーションまで幅広く執筆。特に「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマで高い評価を得ている。2012年『犯罪者 クリミナル』(後に『犯罪者』に改題)で小説家デビュー。’13年『幻夏』で第67回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)にノミネート。’20年『彼らは世界にはなればなれに立っている』で第4回山中賞受賞。’23年『未明の砦』で第26回大藪春彦賞受賞。’24年本書に収録の「夏を刈る」で第77回日本推理作家協会賞(短編部門)のノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
道楽モン
57
太田愛の新刊は短編集だった。前作『未明の砦』で作家として大きく飛躍した感があるが、本作で単行本未収録作品はすべて出尽くした。ある意味で修行時代を終えたのかもしれない。長編を得意とする作風の彼女が、短編を如何に料理するのかというお手並み拝見的態度(←偉そうだなぁ)で読んでみたのだが、やはりどこか無理している感じは否めない。既成の枠にハメようと苦心しているようで、不自由さが隠しきれていない。純文学的な流れでも良いのになぁ。私がブレイクを待ちわびている最右翼の作家。渾身のジャンプを楽しみに待っているのだ。2025/07/07
ごみごみ
51
太田愛さんの作品は、どれも情景が鮮やかに映し出され、自分がすぐそばで見ているような錯覚に陥り、物語に入り込めるところが好き。5話の短編+エッセイ。Jミステリーシリーズで既読だった『夏を刈る』『鯉』の2作品が好き。塗り変えられ、忘れられた記憶の裏にあったのは・・残酷で切ない真実。2025/07/07
pohcho
46
短編五編と巻末に短いエッセイ。幻想的で仄暗く、ノスタルジーを感じさせる太田さん独特の世界観。「夏を刈る」「鯉」の二編のミステリーが好み。次はガツンとくる長編を楽しみにしている。2025/07/22
天の川
46
いつもの骨太の社会派長編小説のイメージとは異なる短編集。5編中で「十月の子供たち」は異質。突然爆撃を受けた地域で地下室に潜んで生き延びた双子の物語は今も戦火に暮らす子供たちを想起し、辛い。他は昭和のノスタルジアが死の匂いを包む。「夏を刈る」「鯉」はミステリー仕立て。過去の事件の真実に関係者が口をつぐんでいた理由の優しさにグッとくる。団地を舞台にした「サイレン」、命がけの一人遊び「給水塔」はどこか懐かしくて、じわりと切なくなる。最後のエッセイも含め浸れる作品集だった。でも、早くガツンとした長編を読みたいな。2025/07/18
竹園和明
41
いきなりの『十月の子供たち』に心を持って行かれた。戦禍の中、両親を失いながらも生き延びた姉弟の悲しい別れが胸を刺す。こういう別れが現実にある事を我々はしっかり心に刻み、反戦を主張すべきだ。『サイレン』の昭和ノスタルジア、こういうのも書くのか太田愛!。その他3つの短編と短いエッセイを収載。似た質感のものがなく、社会派サスペンス作家というパブリックイメージをひっくり返すに値する短編集。ただ一点だけ言うと、短い尺の中にやや詰め込みすぎかな。短編なりの緩急があれば完璧だったね。しかし読み手を引き込む力はさすが。2025/07/12