出版社内容情報
「我が蔵人頭は、優しいが頼りない……」
幼い頃に父を失った藤原行成は、平安貴族としての官位栄達を諦めていた。しかし、行成の姿を見ていた一条天皇は、彼を側近である蔵人頭に任ずる。
その行成は、一条天皇の感情の自制と苦悩に満ちた生涯を目の当たりにすることとなった。
筆の名手「三蹟」の一人として知られる行成とその妻、一条天皇と中宮定子、そして清少納言。互いを信じて想い合う姿には、愛が溢れていた。
内容説明
我が蔵人頭は、優しいが頼りない。しかし、私の目に狂いはなかった。幼い頃に父を失った藤原行政は、平安貴族としての官位栄達を諦めていた。しかし、行成の姿を見ていた一条天皇は、彼を側近である蔵人頭に任ずる。その行成は、一条天皇の感情の自制と苦悩に満ちた生涯を目の当たりにすることとなった。筆の名手「三蹟」の一人として知られる行成とその妻、一条天皇と中宮定子、そして清少納言。互いを信じて想い合う姿には、愛が溢れていた。紛れもなく“帝”。だが、一人の孤独な少年だった。行成は、その想いに寄り添い、見守りたかった…。権謀術数が渦巻く平安時代を舞台に、“愛”を描く王朝ロマン。
著者等紹介
佐藤雫[サトウシズク]
1988年、香川県生まれ。「言の葉は、残りて」(「海の匂い」を改題)で第32回小説すばる新人賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
144
道長と一条帝の間を取り持とうと奔走する藤原行成の姿は『光る君へ』でも見どころだったが、その苦労話を深く掘り下げていく。実直な官僚として重職に就くが、一方だけに肩入れできず全員を救おうと知恵を絞る。その懸命さが却って双方から信頼され、一層苦労させられてしまう。だからこそ帝は辞世の歌を彼に託し、清少納言と共に定子への深い想いを再確認するに至ったのだ。確かに美しい生き方だが、あまりにもどかしい。行成が「パトレイバー」の後藤隊長みたいな性格なら、「みんなで幸せになろうよ」と宮中を思い通りに動かしたかもしれないが。2025/02/24
のぶ
71
佐藤さんの味わい深い平安の物語を堪能した。恋愛小説とも言えるけれど、本作は男女間の愛に留まらず、主従間の愛も描き、様々な想いに溢れた作品だと感じられた。本作で主人公となるのは、父親が早く死去し後ろ盾がないことから藤原傍流。栄達願望は特になく、妻の奏子との平穏な暮らしこそを望んでいる藤原行成。一条帝の望みにより何と、帝に近侍し補佐する職の長官=蔵人頭に任命される。そんな蔵人頭の立場で見た宮中の人間模様が描かれている。行成の人物像が優しく造形されていて、読み心地も、読後感もとても良い話だった。2025/02/06
星群
68
〝桜が人になったら、きっとこんな人だろうと思った〟冒頭の一文が、私の心を鷲掴みにする。痺れます、佐藤さん。素敵。桜の様な中宮定子をはじめ、〝ぎょうせい〟蔵人頭藤原行成、定子を溺愛する一条天皇、そして清少納言。様々な人の思惑がひしめく世界で、大切な人に寄り添うことがどれだけ大変なことか、それを観せられた様な気がします。息吐く暇もない程でした。2025/04/16
さつき
57
一条朝に蔵人頭を務めた藤原行成の視点から見た一条天皇と皇后定子の愛の物語。良き君主であろうとする自覚と愛の狭間で苦悩する天皇は良かったけど、定子はちょっと私のイメージとは違いました。あまりに我意が強くて辟易してしまいます。枕草子の定子はもっと明るくて軽やかで思いやりのある人なので違和感がありました。清少納言は楽しく幸せだった定子の姿しか書かなかったということなのでしょうけど。題名には行成の名が入り、語り手でもありますがあくまで一条天皇と定子の物語。もう少し行成の後半生も読みたかったです。2025/01/11
がらくたどん
56
佐藤雫「純愛」歴史シリーズと勝手に呼んでいる御著書の最新刊は大河も懐かしい藤原全盛期が舞台。生まれた瞬間から帝の道を運命づけられたナイーブな青年一条帝と后になるべく育てられた高慢可憐な定子姫の激しく切ない愛の行方を優しく真面目だが不器用・鈍感で遠慮と忍耐が身に馴染み切った能筆能吏の藤原行成の視点で描く。帝一条として課せられた愛と青年懐仁として望む愛に引き裂かれるひとりの若者の姿に一介の家臣ながら常に成行としての愛だけを護れる男は何を想うのか。緊張で腹痛を起こしつつ困り顔で見上げた桜が輝きながら散っていく。2025/01/13
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